「クロエ(CHLOE)」といえば、美しいシルエットのパンツや可愛らしいデザインのブラウス、金具が印象的なバッグを思い浮かべる人も多いのではないだろうか。しかし、ブランドの“存在価値”はもっと深いところにある。
昨年12月にコンパニー・フィナンシエール・リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT以下、リシュモン)傘下の同メゾンに入社したリカルド・ベッリーニ(Riccardo Bellini)最高経営責任者(CEO)は、「クロエ」のルーツである女性の自由と前進に強くコミットメントする方針を打ち出した。それにより、クリエイティブなだけでなく、ビジネスモデルを“パーパス・ドリブン(目的主導)”でコミュニティーに根差し、説明責任を果たすものへと再構築する。
“パーパス・ドリブン”とは、企業活動の中心にパーパス、つまり企業の存在意義を据えて従業員が行動することを指す。11月に行われた就任後初のインタビューで明かした、具体的な計画とは?
「私たちはコレクションへのフォーカスから、人と人とのつながりに重きを置くようにシフトしている。もはやコレクションを作り発表するだけでは十分ではない。どのように観客とつながりを持ち、そのつながりをどのように育み、成長させていくかということを継続的に探求しているところだ。ブランドの存在意義や信念、価値観、つまり“パーパス”は、商品や美学と同じくらい重要なものになるだろう」とベッリーニCEOは語る。同氏はこの考えに行き着くために、社会学者などの専門家の力も借りた。
具体的なアクションとしては、環境損益計算(EP&L)同様の計算書の作成や、環境や社会に配慮した事業活動を行う企業に与えられるBコープ(B Corp)認証の取得から、女子教育に特化した基金や説明責任を果たすための専門家から成る諮問委員会の設立まで多岐にわたる。そして、「 “パーパス・ドリブン”というコンセプトは、収益性のある成長と地球や社会、コミュニティーへの積極的な貢献を両立させることだ」と強調し、「私たちのモットーは、美しく、収益性があり、有意義であることだ」と笑顔で答える。
約1年前にメゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)からクロエに入社したとき、ベッリーニCEOに課せられたミッションは、ビジネスが軟化し、創業者であるギャビー・アギョン(Gaby Aghion)の先駆的な精神から遠ざかっていたブランドにエネルギーと成長を取り戻すことだった。難易度の高いミッションだったが、追い討ちをかけるように新型コロナウイルスのパンデミックが発生。しかし、それによって彼は「ビジネスモデルの抜本的な改革」へのコミットメントを再確認した。「今後の計画は全てブランドの真の精神とルーツに本当に根差したものでなければならず、それが私をDNAとコアバリューの深い探求へと導いた」と明かす。
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