「バレンシアガ(BALENCIAGA)」は6日、2021年秋コレクション(2021-22年秋冬に相当)を、オリジナルのオンラインゲーム「アフターワールド:ザ・エージ・オブ・トゥモロー(Afterworld: The Age of Tomorrow」で披露した。ゲームでは2031年を舞台に5つのゾーンを冒険しながら、ルックをチェックできる。公式サイトからプレイでき、ゲーム内を移動しながら、各ルックの細かい刺しゅうやデザインを好きな角度から見られる。
ゾーン1はまずストアの中から始まり、モデルがたたずむ中を進む。ゾーン2は一転してニューヨーク市内が背景となるが、ゾーン3では再び建物内を揚々としたBGMと共に歩く。そこから場面は森の中に変わり、ゾーン4では白いウサギが導く方へ進むとモデルたちが踊るシーンが登場する。ラストステージでは石場の険しい山の上で鎧を着た主人公が地中に刺さった剣を抜き、山頂の一本道を通って夕日に向かって歩いて行く。ゴールにたどり着くと夕日が丸い形に変わり、プレイヤー向けに呼吸法のワークアウトが行われるという流れだ。
「バレンシアガ」のデムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)=アーティスティック・ディレクターはゲームを通じて発表するというアイデアを、4月には思いついていたという。メールでのインタビューでは「ファッションとは洋服を愛することであり、人々が性格や自分自身を表現するのに必要な“現代の鎧”だ」と述べている。ゲームについて「1から全世界を作った。どのような種類の木を置いて、どんな葉っぱをつけるか、どのような夕日にするかなど全てを決めた。ゲームのビジュアルを本物でリアルに見せるためには、細部にこだわらないといけない」と語った。
コレクションはビッグシルエットやストリートウエアの要素が、鮮やかな色合いと質感の良い素材、オートクチュールのようなカッティングと融合している。アウターはナサ(NASA)のロゴが入ったボマージャケットやオフショルダーのダウン、フード付きのブランケットコートなどバリエーション豊かにそろえた。中世ヨーロッパの鎧をモデルにした銀色のブーツも大胆なスタイリングでコレクションに活気を与えている。
ヴァザリア=アーティスティック・ディレクターは、「洋服全体において、古くなった洋服をどう処理するかについてよく考えた。将来のサステナブルでスマートな消費方法では、洋服がボロボロになるまで着ることになると信じている。そのため、このコレクションには着古したような洋服がたくさんある」と語った。
同コレクションではアップサイクルにも取り組んでおり、残布をダウンジャケットに刺しゅうして毛皮のような質感を実現した。多くのアイテムはユニセックスでユニサイズとみられ、サステナブルな素材を93.3%に使用したという。
彼自身ゲームにハマっているという程ではないが、カーレースのゲームはやっているという。「家で仕事をするときの短い休憩時間でプレイしている。頭を少し休ませて仕事から離れるのに助かっているので、瞑想に近い感覚だ。オンラインゲームの美学や、90年代から現在までいかに発展してきたかにずっと魅了されてきた」と述べた。
「アフターワールド」は寓話的な冒険を軸に、キャラクターやビジュアルには写真から3DCGモデルを作成するフォトグラメトリーを採用している。ヴァザリア=アーティスティック・ディレクターは自身のヒーローについて「個人的には祖母や両親、夫のロイック(Loick)が、私のヒーローだ。神話では、アキレス(Achilles)かな。小さいところながら急所となる弱点を持つヒーローが好きだから。歴史上の人物からは若さと勇気の象徴であるジャンヌ・ダルク(Joan of Arc)。ゲームの世界では『ホライゾン・ゼロ・ドーン(Horizon Zero Dawn)』のアロイ(Aloy)だ。彼女は私と同じような異端児だから」と語った。