「バレンシアガ(BALENCIAGA)」は6日、2021年秋コレクションを、オリジナルのビデオゲーム「アフターワールド:ザ・エージ・オブ・トゥモロー(Afterworld: The Age of Tomorrow)」内で発表した。ゲームは一般向けにオンラインで公開され、「WWDJAPAN.com」の取材班も公開と同時にチャレンジ。また、編集部には米フェイスブックが開発したVRヘッドセット“オキュラス クエスト(OCULUS QUEST)”が届き、VRでショーを見られるという仕掛けも用意されていた。
ここでは、ウィメンズ・ファッション・ウイーク取材担当の記者の大杉真心と、入社2年目の若手記者で普段からゲーマーでもある大澤錬の2人がゲームを体験。それぞれの視点から今回のコレクションを読み解く。
VRで360度で見渡せるショーに大興奮
大杉真心「WWDジャパン」記者(以下、大杉):ゲームの中で発表するって聞いて、数日前からこの日を楽しみにしていました。私はまずはスマホでプレイして、2回目はパソコンから操作してみたんですが、デバイスが変わるだけで見え方や表示画面が全然異なって驚き!パソコンの方が画面が大きいから迫力が出るし、最初にキャラクター選択画面のような動くルックが見られて興奮(笑)。これはスマホでは見れなかったです。大澤くんは会社に届いたヘッドセットでコレクションを見たんだよね?
大澤錬「WWDJAPAN.com」記者(以下、大澤):始まる前から「わ!“オキュラス クエスト”だ。お高いものだから丁重に扱わないと」とちょっと緊張しました。ヘッドセットの調整をし、両手にはコントローラーを持ち、準備万端で22時のスタートと同時に自宅で見ました。始まると歓声と共にBGMが流れ始め、本当のショーのように、目の前のステージを原寸大のモデルがウオーキングして、360度で見渡せてとても興奮。ショー中にコントローラーを左右上下に振り回したときには何も反応せず…..でしたが、贅沢にもフロントローの中央の席でショーを見れたのは嬉しかったですね。ショー内の周りの観客は全てアバターで構成されていて、家の中で頭を左右に動かして横の人を確認したり、ランウエイの方に近づいてみたりしてました。
大杉:すごく近未来的!デジタルの中に入り込んだように没入できちゃうよね。フロントローでショーを見れるのも貴重な体験だね。ショーの音楽など演出はどうだった?
大澤:BGMは、2017年のメンズコレクションからデムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)のショー音楽を手掛けているBFRNDことロイク・ゴメス(Loik Gomez)の「エージ・オブ・トゥモロー(The Age of Tomorrow)」が流れていました。
大杉:本題のゲームも「アフターワールド:ザ・エージ・オブ・トゥモロー」というタイトルでリンクしているね。操作は普段からゲームをしていない私には難しかったな。最初の10分間は進行方向に進むことすらできず、壁にぶつかってばっかりで四苦八苦(笑)。この時点で酔っちゃった人もいたみたい。モデルのアバターたちの間を通りながら進むと、途中で一輪のバラを持った男性が目の前に現れたり、手から火を出す男性の前でバスが宙に浮いたりとサプライズが待っていたよね。あと、アバターの中にはデーモン閣下みたいな白塗りに黒いアイメイクの人とか、口から血が垂れた流血メイクもシュールだった!スクリーンショットを撮りながら、ゆっくり進んでたらあっという間にゲームオーバーになっちゃって、最終面のゾーン5に行くまでに50分はかかったよ。普段からゲームに慣れている大澤くんには簡単だった?
大澤:操作方法としては単純で左側が進行方向キー、右側がカメラワークでしたね。僕はスマホでプレイしている時に一度落ちてしまい、最初からやり直しというハプニングが(笑)。恐らくゲームの性能・質が高すぎて、スマホでは耐えきれなかったのが原因かもしれません。僕はひたすら本気モードで、右上の時間制限なんか気にせず、楽勝でゴールまで駆け抜けました。各ステージは店舗から街並み、森林まで、さまざまなロケーションで楽しむことができました。最初は“ゲームあるある”で、アバターに近付くと何か喋ったり説明したりしてくれるのかと思いましたがそれはなく、360度でアイテムを見るための仕様でしたね。ヘッドセットでコレクションを見た最後のルックの騎士がゲームのエンディングでも登場してきました!
2031年の世界を舞台にした未来の服
大杉:騎士はジャンヌ・ダルク(Jeanne d'Arc)のようでかっこよかったね!ゲームの世界は2031年が舞台になっていて、デムナは未来の服を想像しながら、何十年も着用できる洋服をデザインしたとのこと。実はテーラードスーツはジャージー素材で作られていて、ストーンウオッシュ加工で着古されたような仕上がりになっていたり、メッシュ裏地が付いたストレッチ素材のスーツは、パフォーマンスウエアのような着心地だったりと、こだわりが詰まっているんだって。ダッフルバッグにもなるパーカや、コートになったブランケットなど、変身しているアイテムも多かったね。そこに、ゲームキャラクターらしいアーマー風のブーツをあわせて、非日常的なデザインのバランスがよかった。あれ、400年前の本当の鎧の形を再現しつつ、鋼よりも軽い素材でできているらしい。日本での販売は未定だけど、ちゃんと商品化されるそう!
大澤:ゲームの世界で登場するようなウエアで出てきて面白かったです。また「ナサ(NASA)」や、先日発売された「プレイステーション5(PLAY STATION 5以下、PS5)」とのコラボアイテムも登場しましたね。「ナサ」とのコラボでは、宇宙服をほうふつとさせるアウターのほか、MA1やショルダーバッグなどがあり、特にバックパックは多くのモデルが着用していたのでイチ押しだということが分かりました。「PS5」とのコラボパーカは、ゲーマーの人たちがかなり欲しがるんじゃないでしょうか。フロントに「プレイステーション」のアイコニックなロゴと「PS5」の文字、アームには「バレンシアガ」のロゴも施されていてコーディネートに取り入れやすそうです。ゲームとファッションの融合が少し、現実味を帯びてきた気がします。
大杉:Tシャツのメッセージも目を引いて「If I am lost, take me to the Balenciaga store(私が迷子になったら、バレンシアガ店舗に連れてってください)」とクスッと笑えた。シャツには「When I am done with this shirt, I will donate(このシャツを着なくなったら、寄付します)」とあって、ユーモアを混ぜながら、循環型経済をちゃんと促しているのもさすがだなと思いました。これまでもWFP(国連世界食糧計画)などとのチャリティー商品もあったけど、こういう風にソーシャルグッドな発信を自然に取り入れているのはすごく共感できる。クリエイションの雰囲気は大きく変化はないけれど、毎回新しい取り組みや素材のアップデートがあって「バレンシアガ」はやはり先進的なブランドだと感じたな。
大澤:僕のようなZ世代は特に小さい時からゲームで遊ぶ環境があったので、やはり自然とワクワクしちゃいました。ファッション好きだけでない、幅広い層へ刺さるコレクションだったと思います。ゲームだけにフォーカスするのではなく、『バレンシアガ』らしさは残しつつ、さまざまな取り組みを同時に見せていくのは素晴らしいですね。異業種と掛け合わさることで、どんなハレーションが起きるのか今後も楽しみにしています!