※この記事は2020年9月14日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
それでも、「欠品」はダメですか?
ファーストリテイリングの上級執行役員だった神保さんの連載を担当して、店舗における「欠品」という“事態”の深刻さの一端を垣間見た気がします。店舗の評価に直結する重要なチェックポイントなんですね。
「そんなコトも知らなかったのかよ!」と怒られてしまいそうですが、改めてボリュームゾーンでは「欠品=機会損失」という認識なのだと学びました。でもラグジュアリーでは「欠品=人気の証」でもありますよね(違いますか!?)。だとしたら、ボリュームゾーンでも「いやぁ、人気であっという間に売れちゃったんすよ」じゃダメでしょうか?甘っちょろいでしょうか?だとしたらファッション&ビューティ(カラーコスメ)の世界は、大変ですね。「欠品はダメ」、なのに「シーズン終わりに売れ残ってもダメ」なんて。僕なら「そんなの、ムリです!」って逃げ出してしまいそうです。
やっぱり「甘い」と言われるかもしれませんが、もうちょっと続けさせてください。「欠品」で怒り狂う人って、そんなにいるのでしょうか?1分間想像してみましたが(余談ですが、この「1分間だけ真剣に想像する」、オススメです。1分だけ、でもあらゆる業務をストップして想像すると、何かが見える時って結構ありますよw)、百貨店のバイヤー以外、思い浮かびませんでした(笑)。確かにこの方々は、「欠品」に対してとってもシビア!でも、消費者はどうでしょう?そりゃ私も「え~、マジか」くらいは口からポロリと出ちゃうかもしれないくらいガッカリはしますが、美味しいご飯を1回食べれば忘れます(笑)。友人は常に「じゃあ、メルカリで探すか?」と“リセット上手”です。Twitterでは、「サーバが落ちた!」とか「カートには入れられたのに……」とか「いつか、買えるときが来るんだろうか?」なんて投稿を目にしますが、いずれも「怒り心頭!!」ではなく、むしろ投稿までの一連をエンターテインメントとして楽しんだ感さえあります。そんな投稿を見るたび、「売り切り御免」でいいんじゃない?って思うのです。
もしくは「再販」でいいんじゃないですかね?「追加生産」・「追加入荷」だと「発売」したシーズンのセール期間が終わるまでに売り切るプレッシャーに駆られてしまいそうなので、「再販」で仕切り直すのはいかがでしょう?些細な違いなように思うかもしれませんが、「言霊」なんて言葉もある国です。言葉は心を、そして体を支配するほどの力を持っています。だから「追加生産」・「追加入荷」ではなく、「再販」。これが許されるブランドへの進化を遂げることができたら、「欠品」はだいぶコワくなくなるのでは?って思うのです。「フーフー」の高坂マールくんは、「買えなかった~」という投稿さえ結構リツイートしています。「欠品」は深刻なものではなく、「再販」への通過点と捉えているのかな?
サステナブルなマインドが浸透し、私たちのビジネスは、3年前と大きく変わりました。3年前は「暗黙の了解」だった廃棄も、今は許されないムードです。ならば在庫というリスクと背中合わせの、「欠品」を必要以上に忌み嫌う感覚もアップデートすべきでは?と思います。それでも、「欠品」はダメですか?
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