フェラーリ(FERRARI)を持つイタリアの投資会社であるエクソール(EXOR)は、エルメス・インターナショナル(HERMES INTERNATIONAL以下、エルメス)が保有する「シャンシア(SHANG XIA)」に約8000万ユーロ(約100億円)を投資する。これにより、エクソールは20年末までに「シャンシア」の大株主になる。エルメスは引き続き、エクソールと「シャンシア」創業者のジャン・チョン・アー(Jiang Qiong Er)=アーティステック・ディレクター兼最高経営責任者(CEO)と並んで重要な株主となる。
エクソールは、数々の実業家を輩出してきたアニエッリ(Agnelli)家が運営するヨーロッパ有数の持ち株会社だ。フェラーリに加えてフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FIAT CHRYSLER AUTOMOBILES)、国際保険会社のパートナー・リー(PARTNER RE)、産業機械や商用車の製造・販売を行うCHNインダストリアル(CHN INDUSTRIAL)、サッカークラブのユヴェントスFC(JUVENTUS FC)、イギリスのメディア事業のエコノミスト・グループ(ECONOMIST GROUP)、メディアコングロマリットのGEDIグルポ・エディトリアレ(GEDI GRUPPO EDITORIALE)など幅広い事業の主要株主だ。
「シャンシア」は、2009年に中国発ライフスタイルブランドとしてチョン・アー=アーティステック・ディレクター兼CEOがエルメスと共に立ち上げた。「シャンシア(中国語で上下の意)」には「過去と未来」という意味もあり、中国の伝統文化と職人の技を現代流に解釈してデザインしたファッションやインテリア、生活雑貨などを提案する。上海に旗艦店を構え、北京をはじめとする中国各地、パリ、台湾、香港に店舗を構えている。21年にはシンガポールにも出店予定だという。
今年創業10年を迎えた「シャンシア」は中国での事業拡大を図り、若い顧客層に向けたカプセルコレクションを発売すると20年初めに発表した。19年におけるブランドの売り上げは前年比60%増で、その90%が中国からだった。しかし「シャンシア」のパトリック・トマ(Patrick Thomas)会長によると、69億ユーロ(約8640億円)を売り上げるエルメスにとってはわずかな貢献であったという。
また「シャンシア」は中国の伝統的な技術を持つ職人を探すのに多くの時間を費やしたこともあり、ブランドのスタートがなかなか安定しなかったという。20年初頭の見通しは暗いものだったが、新型コロナによる渡航制限や地元での消費を支える政府の政策を受けて、中国の国内消費は拡大するだろうとトマ会長とチョン・アー=アーティスティック・ディレクター兼CEOは期待を示した。
エルメスのアクセル・デュマ(Axel Dumas)CEOは、「『シャンシア』が10年で大きく成長したことは、ユニークなモデルと独自のスタイルの証であり、誇りに思う。エクソールとは長くにわたって企業家精神や一族経営文化を共有してきた。『シャンシア』の新しい成功を築いていくことができるだろう」とコメントした。