※この記事は2020年9月16日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
セクシービキニな香水の広告戦線に「異常アリ」?
今日は、「ドルチェ&ガッバーナ」の香水にまつわるお話。とはいえ、瑛人さんやTikTokではありません。
皆さん、「ドルチェ&ガッバーナ ライトブルー 広告」とグーグルで画像検索してみてください。イタリア・シチリアかと思われますが、青空の下に澄んだ海、そこにメンズとウィメンズの香水“ライトブルー”というビジュアルをたくさんご覧いただけるでしょう。
では今度は、同じ言葉を英語で打ち込み、検索してみましょう。打ち込むキーワードは、「DOLCE&GABBANA LIGHT BLUE AD」。すると、なんということでしょう!!真っ白なビキニ姿のモデル、ビアンカ・バルティとデイヴィッド・ガンディがボートに密着して寝そべったり、体を絡めあったりのビジュアルが勢ぞろいします。「同じ香水でも、日本と海外ではこんなに違うか!?」と驚愕するハズです。
日本と海外でこんなにビジュアルが違うのは、イタリアンブランドのフレグランスと、コリアンドラマではないか?と思っています。イタリアンブランドならではの「男性らしさ」や「女性らしさ」が確立したのは、ミケランジェロの頃なのか?それとも、ムッソリーニの頃なのか?なんて考えることもありますが、いずれにせよ、イタリアンブランドによるフレグランス(特にメンズ)の海外ADは、「真夏の海辺で撮影しがち」「メンズモデルは日焼け肌でビキニになりがち」「男女ともにプールから上がりがち」です。でもそれは、日本では別の話。「セクシー」とか「セダクション(誘惑)」という概念は受け入れがたい人が多いと考えられている日本では、一線を画したビジュアルでコミュニケーションを図るブランドが多い印象です。反対にコリアンドラマの日本の広告ビジュアルは、「男女が1:1(もしくは2:1)になりがち」「背景ピンクに染まりがち」「タイトルにハートマークが入りがち」ですね(笑)。
前置きが長くなりましたが、そんなイタリアンフレグランスの海外ADも、最近は変化しているそうです。海外でも「セクシー」や「セダクション」の要素は共感しがたいモノになっているようで、ビジュアルの刷新が相次いでいます。原因はジェンダーレスの潮流と、コロナによるマインドの転換でしょう。海外ADも、ステレオタイプや既成概念から脱却し始めているのです。「ヴィクトリアズ シークレット」の衰退を思い出します。
香水の世界は今、店頭で香りを確かめるという行為が制限されているので、なかなかに厳しいという話を聞きます。セクシーなADもダメ、テスターの設置もダメとなると、残された手段はなんでしょう?そう、メッセージの発信です。多くの業界でブランドが消費者に直接語りかけるD2Cコミュニケーションが盛り上がっていますが、香水もまた調香師が自らの思いを香りのみならず、言葉でも表現する時代に突入しそうです。
さぁ、一番共感できる香りを生み出し、言葉を紡ぐ調香師は誰でしょう?しばらくはそんな視点で、新作フレグランスをチェックしたいと思います。
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