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男性2名が実践するファッションとしてのカラーメイク

 近年のメンズコスメ市場は、ベースメイクやカラーメイクを発表するブランドが相次ぎ、スキンケアだけでなく、BBクリームやファンデーション、さらにはカラーメイクを取り入れた男性も増加している。メイクを普通にしている韓国アーティストの台頭で中性的な“美”に憧れる若者が増加しているのに加え、ラッパーでファッションアイコンとしても人気を博すエイサップ・ロッキー(A$AP Rocky)やポスト・マローン(Post Malone)はネイルをファッションの一部として取り入れていることなどから、街中でネイルをしている男性を見かけることも珍しくなくなった。今回、メイクをファッションの一部として、メイクを含めたトータルファッションを楽しむ男性2人を取材した。

アクセサリー感覚で楽しむメイクやネイル

 

WWD:メイクはいつごろから始めた?

野口:今年の初夏くらいからです。新型コロナウイルスの影響で、人と会いづらくなっていた状況だったので家にいる時間が長くなっていました。それを逆手にとって自宅でいろいろ試したり、研究したりして過ごしていました。始めるにはちょうど良いタイミングだったと思います。

WWD:きっかけは何だった?

野口:アクセサリーを着用するような感覚でネイルをしている男友達がいて、はじめはネイルに興味を持ちました。普段黒い服しか着ないので、体の一部に色があるのが新鮮で楽しかったです。メイクも目元にカラーがあってもいいかなとネイルの延長で始めました。ファッションに挿し色を加えるような感覚で、今では日々自分の好きなカラーを探していて、完全に“沼”にハマっています。

WWD:メイクを始めて気づいたことはあった?

野口:その日の気分は大きく変わります。先ほども言いましたが、黒い服しか着ないので、街中で目立たないようとどこか意識しています。でもメイクをしていると少し視線を感じるので、それが良い緊張感で生活にハリが生まれました。決して目立ちたいわけでないんですが(笑)

WWD:どのようにメイクの情報を得ているの?

野口:ユーチューブでも見るような韓国っぽい“メンズメイク”は、自分のしたいイメージとは異なっていたので、あまり参考にならないなと思っていました。ピンタレスト(PINTEREST)で探しているうちに、ネイルとメイクをしている海外のモデルを見つけて自分でも真似できそうだなと思って参考にしています。

WWD:メイクをする時の基準は?

野口:ネイルの色によって気分が変わるので、今日は(インタビューを受けるので)落ち着いた印象の緑を塗っています。目元には「ウズ(UZU)」のカーキのアイライナーやマスカラを引いています。「ウズ」は友人が使っていて興味を持ちました。気分を上げたいときは暖色系のコスメを使用して、オンオフ関係なく自由に楽しんでます。

WWD:メイクをするようになったら、周囲の人もメイクも気になるようになった?

野口:メイクを始めるまでは全く分からなかったんですが、自身で使用することで色んなブランドがあって、どういったメイクができるといった理解度も深まりました。街中の女性のメイクを見てどんな風に自分に落とし込めるか、どうすればファッションとして取り入れられるかを考えています。

WWD:ネイルや目元以外のメイクはしない?

野口:以前にBBクリームを試してみたんですが、肌を覆いつくすような印象だったので現状ネイルとアイメイク以外はしていないですね。ただ何かほかに楽しめるものがあれば取り入れたいなと思います。最近では眉ティントにも興味があります。ネイルと同じようにしばらく色が持つので、カラーが楽しめていいんじゃないかなと思います。

WWD:買い物は店頭?オンラインサイト?

野口:お店の雰囲気や店員さんと話すのは緊張するのでオンラインで買うことが多いです。ネイルをしている友人も買い物に行くときに「彼女さんにプレゼントですか?」と聞かれると話していて、まだ男性がメイクやネイルをすることに世の中は慣れていない、理解が追い付いていないのかなと感じています。

WWD:メイクをしたい男性に向けて何かアドバイスするとすれば?

野口:どの色やどんな物を使うのが正解と考える必要はないと思います。ブルーべース、イエローベースなど自分の肌に合ったパーソナルカラー診断もありますが、自分が楽しいと思うカラーを使えばいいと思いますし、ロジカルに考える必要はないって伝えたいです。

メイクも合わせたファッションを意識

 

WWD:メイクをはじめたきっかけは?

定岡:中学2年生のころにK-POPアーティストのビッグバン(BIGBANG)にハマり、男性がアイラインやリップなど、メイクをしていることに衝撃を受けたのがきっかけです。当時、周囲にはメイクをしている男性がおらず、化粧品の知識もなかったので、最初は軽くファンデーションをしたり、眉毛を描いたりと初歩的なことから始めました。

WWD:そこからどのようにメイクを覚えた?

定岡:"渋谷系メンズ"雑誌「メンズエッグ(men's egg)」がギャル男風メイクのファンデーションの塗り方や眉毛の整え方などが特集していて、それを参考にしていました。今でこそユーチューブなどでもメイクのハウツー動画が溢れていますが、当時はメンズ雑誌から情報を得るしかなかったんです。

WWD:女性向け雑誌は読んでいなかった?

定岡:当時、メンズ誌は肌や眉の整え方など身だしなみとしてのメイクしか載っていなかったので、次第に姉や妹が買っていた「セブンティーン(Seventeen)」(集英社)などを読み始めて、アイシャドウやリップの塗り方など徐々にカラーメイクの勉強をしていました。

WWD:どうやって自分に合うコスメを探していった?

定岡:以前、韓国コスメショップで働いていたほど韓国コスメが好きなんですが、成分にもこだわっているものも多い反面、ファンデーションなどはなかなか、肌に合うものを見つけられませんでした。なので百貨店で外資系ブランドのBAさんにアドバイスをもらったり、手につけて色味を確認したりして探しました。

WWD:店頭でタッチアップもしてもらう?

定岡:実は、今まで顔にタッチアップしてもらった経験がないんです。メンズメイクがどんどん普及すればいいなと思う反面、現状男性がタッチアップしている光景はまだまた珍しいですし、僕自身も少しタッチアップを受けるのに抵抗があります。韓国コスメショップで働いていた時に、店外で入りたそうにしていた男性のお客さんに声をかけると、「メイクの知識もなく女性しかいなくて恥ずかしくて……」と言っていて、僕と同じように周囲の目を気にしているんじゃないかと感じました。はやく世間の理解が深まればなと思います。

WWD:どれくらいの頻度でメイクしている?

定岡:毎日です。仕事の時は現場にメイクさんがいても自分でしちゃうくらいこだわりが強いですし、コンビニに行くときでさえメイクは欠かせないです。いつもメイク道具は持ち歩いていて特にUVカット効果の高い日焼け止めは欠かせません。

WWD:メイクにはどれくらい時間をかける?

定岡:大体1時間~1時間半です。仕事上、朝がとても早い時もありますがそれでも欠かさずメイクをします。メイク後の自分が好きだし、自信を与えてくれる。それが一日のモチベーションにもなるのでメイクをする時間は、僕にとってはすごく大切で楽しい瞬間です。

WWD:マスク生活を強いられる今、メイクにも何か変化はあった?

定岡:リップはマスクを外した時に塗るようにしています。顔の大部分が隠れているので見えている目元は、特に以前よりもメイクで遊ぶようになりました。これまで使ってこなかったマスカラを塗り始めたり、アイシャドウもピンクなどの明るい色を取り入れたりしています。マスカラは「ウズ(UZU)」を愛用していて、肌が暗めなので主張が強くなり過ぎないようにコッパー(ブロンズカラー)などのブラウン系を使っています。

WWD:こだわっているメイクのポイントは?

定岡:最近はホワイトのアイラインです。今まではブラウン系のアイシャドウは使っていましたが、「ウズ」ホワイトのアイラインを使うようになってから、カラーを引き立ててくれるオレンジやイエローなど原色系のアイシャドウを使うようになりました。これまでリップやアイブロウなどは使用していましたが、本格的にカラーメイクを始めたのは「ウズ」を使用し始めたのがきっかけです。

WWD:メイクを始める前後で何か変わったことは?

定岡:沖縄出身でよく日焼けしていたこともあり、肌が黒いのがコンプレックスでした。メイクはそういったコンプレックスをカバーしてくれて自信をくれるので、メイクをしている自分のほうが100倍くらい好きです。コンプレックスをなくしてくれる生活に欠かせない存在です。今はファッションの一部としても取り入れています。

WWD:どんな風に取り入れている?

定岡:アイラインって昔は黒系のカラーが多くて目を大きく見せたり、強調したりというイメージでした。今は目元にカラーを持ってきて、アクセサリー感覚でファッションに合わせたメイクにハマっています。例えば、今日の少しモードなコーディネートだと白いレザーのベストと刺し色のオレンジを目元にアイラインの色でリンクさせています。メイクも込みのファッションを意識しています。

WWD:どうすれば男性のメイクにもっと理解が深まると思う?

定岡:メイクをしている男性がもっと“自分”を発信していかなきゃいけないと思います。
どうすればメンズメイクが広まるのか、当たり前になるのかを僕も日々考えています。

WWD:メイクに一歩踏み出せない男性に言葉をかけるなら?

定岡:他人からどう見られるか、メイクをしている自分がどんな風に思われるか不安な気持ちになる男性も多いはずです。僕も昔はそうでした。自分のメイクが周囲にどう思われるか不安で、なるべく自然に見えるように気を使いましたし、不安で鏡ばかり見ていました。だけど今ではメイクをすることで自信も持てたし、今では「誰かの目を気にして躊躇する必要はない。もっと自分らしさを表現したほうがいい」と強く思います。

WWD:ダイバーシティの価値観が広まりつつある現在、“メンズメイク”という言葉に違和感を感じる?

定岡:女性が必ずメイクをしなければいけないという決まりはないし、逆に男性だからメイクをしちゃいけないという決まりもない。だから誰がしていてもおかしくない世の中になればいいなと思います。そういった意味では“メンズメイク”という言葉がなくなるほど寛容な社会になればなと思います。

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