アダストリアは、2017年春に立ち上げた生活雑貨とアパレルの業態「ラコレ(LAKOLE)」を重点ブランドとして出店強化する。売り場の約半分で買いやすい価格の雑貨を打ち出していることで、市場全般としてアパレル消費がなかなか本調子に戻らない中でも、3~11月の既存店売上高は前年同期比5.1%増で推移。これは休業していた4~5月も含めた数字という。雑貨のみでは3~11月で同30.8%増。「利益もまだまだ伸びしろがあり、成長させたい」と福田三千男アダストリア会長兼社長も力が入る。現在、郊外SC中心に21 店を構えるが、今後はファッションビル、駅ビル、地下街などにも出店し、21年春夏では10~15店を新規出店予定だ。
同業態はもともと、機能性を打ち出したアパレルと数万円の大型家具なども含む雑貨の業態としてスタート。19年秋にリブランディングし、アパレル・雑貨ともに価格を抑制。雑貨は100~1000円の日用品(コモディティ)に変えたが、「アジアのトレードショーで買い付けてきて、パッケージだけを変えたような商品では売り場を魅力的に見せることはできない。いくら安くても売れない」(猪瀬清久ラコレ営業部長)と失敗。そこで、20年春からは色別注やブランド名の刻印などのひと手間を加えるようになったことで上向いた。更に、コロナ禍による“イエナカ消費”の盛り上がりも大きな追い風となっている。現在、売り上げ全体に占める雑貨の比率は約30%という。
低価格の雑貨業態の競合として、まず思い浮かぶのは“100均”。「“100均”は圧倒的な物量が魅力だが、“点”での提案が中心。ユーチューブなどでは『“100均”でこれだけおしゃれな日用品がそろう』といった企画も人気だが、あれは商品を選び編集することに慣れている人だからできること」と猪瀬部長。一方、「ラコレ」はシーンという“面”で訴求する。キッチン、バス、リモートワークなど、それぞれのシーンで必要とされる商品を色やテイストを統一した形でそろえ、「その商品を使っている生活がイメージしやすい」ことが支持につながっていると見る。
コロナ禍以降よく売れた商品は、トレンドのくすみカラーを取り入れた水筒(小サイズ900円)、美濃焼の皿(豆皿200円~)、オリジナルのイラストが描かれたまな板(800円)、「他社ではおおよそ2000円前後で出している」という1000円のミニスツールなど。
雑貨は生産ロットがアパレルよりも大きく、色別注、型別注となると数千~数万個からの生産となる。「現状は20店舗しかないため(ロットはそこまでまとまっていないことも多いが)、メーカーは将来性を見て協力してくれている」。そのためにも出店を加速。これまでは400平方メートル前後でSC中心に出店してきたが、認知を上げるために都心の交通量の多い立地などには70~100平方メートル前後で出店。立地に合わせてMDも組み替えられるようにし、3月から新たに打ち出すスキンケア商品やカラーコスメ類(どちらも中身は国産中心)、イヤリングなどのアクセサリー類を前面で展開、集客につなげていく考え。現在、本社内に小型のモデル店舗も作り込み、デベロッパーにアピールしている。