三陽商会の「ブルーレーベル・クレストブリッジ(BLUE LABEL CRESTBRIDGE)」は2021年春夏コレクションから、「エズミ(EZUMI)」デザイナーの江角泰俊氏をクリエイティブ・ディレクターに据える。21-22年秋冬からはメンズの「ブラックレーベル」のクリエイティブトップも兼任する。前任の三原康裕氏は2020-21年秋冬をもって契約満了により退任した。
同社は近年、百貨店販路の客数減などから主力ブランドの苦戦が続いている。「クレストブリッジ」もその例外ではなく、「バーバリー(BURBERRY)」の冠を失った2015年以降は低迷が続いているが、「顧客基盤と商品の品質を強みにしながら『選ばれる理由』を丁寧に作っていけば、もっと面白くできる」と江角氏は前を見据える。ブランド浮上のカギを聞いた。
WWDジャパン:クリエイティブディレクターを引き受けた経緯は?
江角泰俊「ブルーレーベル・クレストブリッジ」クリエイティブ・ディレクター(以下、江角):今年の2月ごろに、三陽商会から打診があった。「エズミ」でロンドンスタイルに焦点を当ててもの作りをしてきた自分と「クレストブリッジ」は親和性があると感じた。歴史のある大手アパレルから声を掛けてもらえたことが、ファッションデザイナーとしてとても光栄だとも感じ、引き受けることを決めた。
WWD:「クレストブリッジ」の強みをどう分析する?
江角:ほぼ全ての商品に使用されている“クレストブリッジ・チェック”(赤、紺、白のタータン柄)に代表されるように、プレッピーでオーセンティックな世界観がはっきりしていることだろう。商品の質だけでなく、ブランドへの憧れでファンを作れるブランドはそう多くない。
WWD:デザインの方向性は変わるのか?
江角:三陽商会には優れた企画機能がある。自分の役割はモノづくりに細かく口を出すよりも、全体を見渡しながらタクトをふることだと認識している。今はもう、服そのものの魅力だけで差別化できる時代ではなくなった。お客さまが店に足を運ぶ理由、買う理由をトッピングできるかどうかに掛かっている。その一環として、ブランドの発信には深くコミットしていきたい。
WWD:どんな発信を考えている?
江角:企画担当者とも密にコミュニケーションをとりながら、商品やその背景にあるストーリーを最大限に伝えられる形で、SNS投稿のクリエイティブや店舗のVMDを作っていく。2021年春夏は、「クレストブリッジ」の原宿本店にスケッチ(英ロンドンの喫茶店)をテーマにした装飾を施した。ブランドのガーリーなイメージとスケッチカフェのキッチュな魅力を融合させ、服を選びながら「ブルーレーベル」の世界に没頭できるような空間を目指した。これをインスタグラムなどとも連動させて打ち出していく。新作の立ち上がりだけでなく、端境期にも店へ足を運んでいただくには、常に鮮度のある売り場を作ることが必要だ。カルチャーやアートなどを絡めながら、店頭にお客さまを呼び込む話題を提供していきたい。
WWD:メンズの「ブラックレーベル」についての構想は?
江角:まだブランドの研究を進めている段階だが、フェミニンなブルーレーベルに比べて、(テイストが)固い印象が受けている。アウトドア、ミリタリーなどの要素も交えながらギミックやユニークな要素を入れ込んでいきたいと考えている。