昨年から今年にかけて、ヘパリン類似物質を配合した商品が続々と登場している。同成分が注目されたのは、2017年ごろに処方薬(医療用医薬品)の血行促進・皮膚保湿剤「ヒルドイド」を美容目的で処方使用する人が増加し問題になったことも一因。化粧品各社はここにビジネスチャンスを見出し、ヘパリン類似物質を配合した商品を次々投入、一つのマーケットが出来上がりつつある。各社それぞれに特徴があり、売り上げも好調だ。同じ世界観の中でどう差別化しているのだろうか。(この記事はWWDジャパン2020年12月14日号からの抜粋に加筆しています)
「ヒルドイド(成分名:ヘパリン類似物質)」はもともと、アトピー性皮膚炎患者や乳幼児などに対する保湿剤として処方されるが、約10年前からSNSを中心に“美容効果があり、3割負担で手に入る”として紹介されている実態があった。そこで厚生労働省が2016年度における「ヒルドイド」など患者が1回当たりの処方量を分析すると、ほとんどは一度に4本以下の処方だったが、中には一度に50本以上の大量処方もあったことから、問題は拡大。医療費を押し上げている上、海外では保湿剤を保険適用にしていない国も多いことから、18年には「ヒルドイド」を保険適用から外したり処方量に制限を設けたりするなどの規制も検討されたが、これは見送りに。それを機に、美容目的での処方は確実に減ることになった。
こうした背景から、「ヒルドイド」と同成分である、保湿や血行促進などに優れた効果があるヘパリン類似物質に注目。各社はビジネスチャンスと捉え、ヘパリン類似物質配合商品を、処方箋がなくてもドラッグストアなどで購入できる市販薬(一般用医薬品、OTC医薬品)として登場させた。処方薬の「ヒルドイド」は当然効き目が強いことが特徴だが、一方で各社から登場している商品は化粧品として毎日使うことも前提としているため、ヘパリン類似物質に加え、心地よいテクスチャーにするための製剤や美容成分も配合されており、保湿プラスアルファの効果があるのが特徴だ。
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