ブランド名にデザイナーの名前を付ける――デザイナーズブランドではごく自然のことだ。自分の名前を冠したブランドを立ち上げることを夢見てデザイナーを目指す者も多いのではないだろうか。しかし今、日本ではブランド名に氏名を含めると商標登録できない事案が頻発している。認められなかったものの中には「ヨウジヤマモト」「アンビルト タケオキクチ」「タカヒロミヤシタザソロイスト.」など有名ブランドが並ぶ。また、ドラッグストアの「マツモトキヨシ」の音商標も認められなかった。かつては商標登録できていたものが、なぜ今できなくなっているのか。(この記事はWWDジャパン2020年12月21・28日号からの抜粋です)
令和になって承認されなかった例
「HANAE MORI」や「JUNKO KOSHINO」など、少なくとも18年ごろまでは人名を含んだブランド名が商標登録されるケースも少なくなかった。それが令和に入って立て続けに否定されている。
ブランド名を保護するには商標登録することが一般的だ。特許庁へ申請(出願)し、ほかに似たブランド名の登録や、未登録であっても有名なブランド名がないかが審査され、なければ登録される。しかし、人名を含むブランド名は特有のハードルがあり、「(前略)他人の氏名(中略)を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)」(商標法4条1項8号)という条件が課される。
要するに「(自分の氏名であっても)他人の氏名は、その他人の承諾を得ないと商標登録できない」ということだ。これは人格権を保護することが目的で、特定の個人が特定の氏名を商標登録し、その権利を独占することで同姓同名の他人の権利を侵害することを防ぐために規定されている。
これまでもこの規定は存在したが、例えばローマ字表記で氏名の間にスペースを入れないなどといった“工夫”を施すことで、登録審査をクリアするケースが多数存在する。しかしここにきて一転、裁判所がこれを否定する判決を立て続けに下したことで、従来の工夫が通用しなくなる可能性が高まってきた。
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