ハンガリー・ブダペスト発のコンテンポラリーブランド「ナヌーシュカ(NANUSHKA)」は、2019年の取り組みをまとめた初のサステナビリティリポートを公開した。05年に“モダン・ボヘミアン”をコンセプトにスタートした同ブランドは、環境や社会に配慮したモノづくりに取り組んでいる。その一環として、19年には専属のサステナビリティチームを立ち上げ、より包括的なサステナビリティ戦略とそのための予算を策定。サプライチェーン全体における環境および社会への影響を測定するためにデロイトと提携し、社内だけではなくハンガリーの現地メーカーからもデータを収集した。そして、25年までにサプライチェーンの全ての段階において透明性とトレーサビリティー(追跡可能性)を実現した100%サステナブルな素材のコレクションへとシフトすることと、段階的に温室効果ガスの排出量削減に取り組み50年までにネット・ゼロ(実質ゼロ)を達成することを目標に掲げる。
リポート作成の背景について、ピーター・バルダスティ(Peter Baldaszti)最高経営責任者とサンドラ・サンダー(Sandra Sandor)創業者兼クリエイティブ・ディレクターは「顧客に対して、ブランドの運営や使用する素材、プロセスについての透明性を保つことは私たちの義務だと考えている」とコメント。「このリポートにより、サステナビリティに対する私たちの信念や努力、全体的なアプローチを皆と共有し、説明責任を果たすことができるようになる。2020年はビジネスにおいて厳しい年になったが、私たちのサステナビリティへの取り組みは途切れることなく続いており、より一層の活力と決意を持って進んでいる」という。
今回のリポートでは、“コミュニティー”“地球”“アニマル ウェルフェア(動物福祉)”“循環性”という4つの大きなカテゴリーに分け、19年の実績や方針、今後の目標などが報告された。例えば、使用する素材についてはサステナビリティの認証を受けたものを増やしており、ウィメンズの20年プレ・フォール・コレクションでは前年同シーズン比6%増の34%のアイテムに採用。コットンやアクリルなど主要素材に関しては、サプライチェーンの各段階における温室効果ガス排出量や環境負荷を示す複合指標“エコ・インパクト”を数値化している。また、19年に出張のために利用したフライトで排出された温室効果ガスを相殺するために約4800本の植樹を実施。倫理的な生産と透明性に対する同ブランドの基準に沿った行動規範の遵守をサプライヤーに求め、19年の時点で83%が基準を満たしていることを確認した。
さらに循環性強化のため、「ナヌーシュカ」は18年から英エレン・マッカーサー財団(Ellen MacArthur Foundation)のメンバーに加わり、ファッション業界における循環型事業実現のためのワークショップに参加。ショップでのリペアサービスや、「レント ザ ランウエイ(RENT THE RUNWAY)」などとの提携によるレンタルサービス、リセールのサポート、デッドストック生地の活用や寄付などに取り組んでいる。パッケージについても、20年から堆肥化可能なポリ袋とリサイクルハンガーを導入したり、返却・再利用可能な梱包材「リパック(REPACK)」を配送オプションとして選べるようにしたりすることで、ゴミ削減と使い捨てプラスチックの廃止を進めている。
同ブランドは今後もサステナビリティに対する取り組みの進捗状況を年次報告することで、他のブランドのビジネスや顧客の生活に刺激を与えることを目指す。