※この記事は2020年9月30日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
小さな「幸せ」をかみ締められる人に
「WWDJAPAN.com」の記事で必ずクリックしてしまうのは、ライター間庭さんの「幸せ産業」連載です。「幸せ」という言葉に特別な価値を見出しているし、私が思う「幸せ」と間庭さんの「幸せ」が近いようで共感できます。
メルマガではお話したことがない(昔、週刊紙では力説したことがありますw)、ちょっと昔の話をさせてください。今から7年前、ロンドンで「バーバリー プローサム(当時)」の2014年春夏メンズ・コレクションを取材した時のことです。
14年春夏メンズよりも前、「バーバリー プローサム」はミラノでコレクションを発表していました。メガカンパニーのトップブランドです。ゆえにコレクションの完成度は、常にトップクラス。でも他のブランド、例えば「プラダ」のように心揺さぶられるほどではありませんでした。特に春夏は、日本同様に蒸し暑いミラノでトレンチコートを見ても、正直あんまりピンと来なかったのです。それがロンドンに移ったら、全てが「そうだよね」「そうなんだ」と思えるようになりました。曇天だと6月でも肌寒いロンドンでは、トレンチコートって大事なんだと痛感したのです。
加えて当時のクリエイティブ・ディレクター、クリストファー・ベイリーの心温まる演出の一つ一つに「幸せ」を感じ、「この一つ一つが『幸せ』だと思い続けられるように、心豊かな人間であり続けよう」と決心し、今に至っています。
例えば、ロンドンの公園に特設したテントに入ると、携帯にはベイリーから「ショーに来てくれてありがとう」というテキストメール(当時からデジタルに積極的なブランドでした)。ショーが始まる前のBGMは、「本当に鳴いてるの!?」と錯覚するような小鳥のさえずり。そしてショーが終わりテントを出ると、芝生の上にはブランケット。弦楽団の生演奏をBGMに、ちょっぴり晴れた、でもまだ肌寒い青空の下でシャンパンを楽しみました。コレクションウイークは常にドタバタですが、当日は日曜日でロンドンメンズの最終日。午後2時とか3時ごろだったと記憶していますが、残るショーはあと数個でゴールは目前。心に余裕もあったのでしょう。そんな演出のそれぞれに「幸せ」を感じ、ファッションショーを通して「幸せ」を分けてくれたベイリーに感謝し、気づいたらもう「バーバリー」のファンでした。半年前までは、ピンと来ていなかったんですけれどね(笑)。
以来、「幸せ」は小さな一つ一つの積み重ねだと思っており、どんなに小さくても、それぞれをスルーせず、噛みしめられる人間でありたいと心掛けています。間庭さんの記事は、そんな私にピッタリ。苦しい時だからこそ、小さな「幸せ」を提供することで進化し続けるさまざまな業界を見ると、なんだかちょっと勇気がもらえるし、「ファッションやビューティも負けてないよ!!」って思うのです。
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