パリ発のシューズおよびバッグブランド「アメリ・ピシャール(AMELIE PICHARD)」は、植物由来の原料を使用したビーガンレザー製のバッグを3タイプ発表した。パイナップルやサボテンの繊維を使用したものは従来の技術を活用しているが、植物の葉をそのまま使ったバッグは世界で初となる。
2010年に同ブランドをパリで設立したアメリ・ピシャールはもともとシューズデザイナーだが、靴はサイズ展開する必要があるため、今回はバッグを実験的に生産した。同ブランドはこれまでもリサイクル素材を使用したバッグを発表しているほか、17年にはオンラインストアに自社製品の中古品コーナーを設けるなど、以前からサステナビリティに取り組んでいる。
ピシャールは、「サステナブルな素材を使用するのはいいことだが、ある程度の量を継続的に供給しようとすると環境に負荷をかけてしまうこともある。また“ビーガンレザー”と一口に言っても、現在の技術では100%植物由来にすることはできないので、何割かはプラスチックなどの化学的な原料が混ざっている。当社のオンラインストアでは、こうした内訳についてもできる限り詳細に記載して消費者が納得の上で購入できるようにしているが、多くのブランドは“ビーガンレザー”としか説明していない」と語った。
例えば今回使用した“ピニャテックス(Pinatex)”は、英国を拠点とするスタートアップ企業アナナス・アナム(ANANAS ANAM)が開発したもので、その90%はパイナップルの葉の繊維を原料としているが、10%はポリウレタンなどで構成されている。同様に、サボテンを由来とするレザーの50%は天然素材だが、残り50%の原料については製造元が開示していない。
しかしサトイモ科のクワズイモの葉をそのまま使用したビーガンレザー「ビリーフ(beLeaf)」は、これらと比べても環境負荷が極めて低いという。象の耳のように大きく厚みのある葉をつけることから“エレファントイヤー・プラント”とも呼ばれるこの植物は、葉を切ってもそこから新たな葉が生えてくるので、収穫の過程で植物自体を枯らさずにすむ。「ビリーフ」を開発したブラジルのバイオレザー企業ノバ・カエル(NOVA KAERU)は、同国内の熱帯雨林に生えているクワズイモの葉を収穫した後、葉の繊維を強化するため環境に優しい方法でタンニングを行っており、将来的には皮革の代替品としてスニーカーや家具などにも用途を広げたいとしている。
ピシャールは、「『ビリーフ』がほかの天然由来の素材と異なるのは、混合物が必要ないところ。もともとレザーのように厚みがあり、手触りも似ている。これまでにない、真の意味でのビーガンレザーだと思う」と述べた。天然の葉を使っていることを強調するため、今回はオリジナルの緑色のままとなっているが、実際にはさまざまな色に染めることができる。バッグを作るに当たっては、補強のためリネン素材で裏打ちしているという。
こうしたビーガンレザー製の商品を発表する一方で、同ブランドでは今後も「サステナブルな方法で」本革製品を取り扱うという。フランスの小規模な畜産農家と提携し、食肉用の牛から副産物として生産された皮革のみを使用した、透明性の高いレザーグッズを提供することを目指す。
ピシャールは、「現在はどのブランドでも、皮革の元である牛や豚を育てた農家までたどることはできない。私は消費者に、自分が手にするバッグやシューズがどういう素材で作られているのか、その素材はどこでどういうふうに生産されたのかなどを知ってもらいたいと思う。商品の“オリジン”を身近に感じられるように、いずれは農家や牛の名前なども分かるようにしたい」と話した。