ファッション&ビューティ業界では毎年、ブランドとバイヤーをつなぎ、業界関係者のビジネスマッチングを創出する展示会が多数開かれているが、今年はコロナ禍で大きな変化が見られた。展示会のデジタル化が進み、オンライン展示会のプラットフォームが登場。リアルで開催する際も予約システムの導入や、消毒検温などの感染対策万全にしていた。
特に多企業が一堂に介し、多くの来場者を集める合同展示会も開催形式の見直しが行われていた。アッシュ・ペー・フランスが主催する20年目の合同展示会イベント「ルームス(rooms)」はOMO(オンラインとオフラインの融合)を目指し、リアルの場での合同展示会を10月15〜17日に新会場の新宿住友ビル三角広場で行い、初のオンライン展示会を9月10日〜12月10日の3カ月間、開いた。コロナ前よりも規模は縮小したが、3日間のリアル開催では200社が参加し、1万4500人が来場。3カ月間のオンライン開催では120社がブースとなるページを立ち上げ、期間中に約3000人の業界関係者の利用登録があった。オンライン展示会に来場した100人が回答したアンケートで、「オンライン展示会は必要か?」という問いに対して、9割が「必要」と回答、「バイヤーにとって効率的になる」と答えた人は全体の6割以上だった。合同展示会のオンライン開催は今後、アフターコロナの時代のスタンダードになる可能性が高い。
課題はバイヤーのサポート体制
「ルームス」は初のオンライン展示会で、パーク&ポートが運営するオンライン展示会プラットフォーム「エグジブ(EXIV)」を活用した。バイヤーがサイト上で商品画像や動画を見てチャットなどでやり取りができるほか、受発注機能まで整っている。利用方法は、リアル開催のリサーチとしての利用が一番多く見られたという。「ルームス」の石塚杏梨ディレクターは「リアル展示会の当日に200社の出店者を全て見ることは難しいため、気になる出店者をチェックして、事前に回るブランドを絞る利用者が多くみられた。今後は、そのチェックリストをシートとして出せるような仕組みも考えたい」と話す。
オンライン展示会での出店者側の準備は、商品を並べて紹介するリアル開催に比べると、商品写真や動画の撮影、説明文の執筆など、これまで以上に工数がかかるものになった。「初のオンライン開催では、出店者側のサイト構築の準備に力を入れ、整えていったが、蓋を開けてみたらバイヤー側もオンラインでの買い付けに慣れていないケースが多かった。今後はオンライン買い付けに関するレクチャーを行うなどサポート体制も整えていきたい」と石塚ディレクター。
生活雑貨、サステナブルな商品、“才能、技術”に注目が高まる
オンライン展示会はバイヤーの動向を分析でき、可視化できるのもメリットの一つ。初回の今回、受注までにつながるブランドは少なかったが、名刺交換に相当する“繋がるボタン”では最高100件、平均25件の“繋がり”を獲得できたという。同ツールでは、フラワーアーティストによる空間演出を提案した「ヒビヤカダン(HIBIYA KADAN)」が“繋がり”の獲得数1位となり、UU(ユニークユーザー)のアクセス数では、不要になった繊維製品を回収し、服作りを行うブランド「ブリング(BRING)」に注目が集まった。
アクセス数・“繋がり”の獲得数ともに生活雑貨ブランドが上位上がり、コロナ禍での“おうち時間”の増加から、生活雑貨を探しているバイヤーが増えている傾向が見えたという。また、アンケートでは「エシカル・サステナブルのブランド・アイテム」を求める声が目立ち、エシカル・サステナブルへの関心の高まりを印象付けている。また石塚ディレクターは「商品だけでない才能、技術という部分にも注目が集まった。バイヤーからも企画開発を一緒にできるブランド、OEM対応可能な企業へのニーズも高い」という。
次回開催は、リアルで3月11〜13日の3日間、オンラインは2月24日〜5月31日を予定。21年1月22日まで出店者を募集している。