2021年春のメイクアップは、コロナ禍という経験を経た「今の気分」が表現されているように思う。さまざまなストレスとの対峙を強いられた、重苦しい空気感から一歩踏み出すように。コレクションのテーマは「春の訪れ」「希望」「夜明け」など、「幕開け」のイメージが目立つ。カラーは花々や木々など、自然の延長線上にあるような、穏やかなトーンが充実している印象だ。そんなメイクのトレンドを、3つのキーワードでひも解きたい。
【メイクトレンド1】
アイカラーの主役は自然を想起する
「ボタニカルカラー」
マスク着用の習慣が続く限り、メイクは「目元」に軸足が置かれそうだ。21年春のアイカラーのトレンドは「ベージュ」「ブラウン」「ローズピンク」など、穏やかなトーンのカラーたち。昨年春のトレンドが明るい「イエロー」だったことを考えると、実に対照的である。
陽光の下で咲くみずみずしい花々を表現した「ディオール(DIOR)」、植物との出合いをテーマにした「ルナソル(LUNASOL)」など、“自然界の美”にインスパイアされたコレクションも多い。自由に外出することがままならない中「自然に触れ穏やかな気分で過ごしたい」、そんな思いが伝わってくる。どの色も透け感に優れており、まだ完全に楽天的になれないけれど「軽やかさ」「透明感」を求める気持ちを象徴している。
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【メイクトレンド2】
大人の遊び心あふれる
「中間色」のアイライナー
ここ数年人気のカラーアイライナーは、マスク着用習慣で、ますます存在感が高まりそうだ。これまでは若年層を中心に、赤やボルドーが流行していたけれど、今シーズンの注目カラーは「絶妙な中間色」。「スック(SUQQU)」からは、ホワイトを含むスタイリッシュなスモーキーグレーが。「セルヴォーク(CELVOKE)」からは、赤みを帯びたビターピンクが登場。いずれも、ありそうでなかった、大人のためのモダンなカラー。あえて太めに入れて、目元に遊び心溢れるニュアンスを添えたい。
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【メイクトレンド3】
リップは透け感のある
トリートメント系
この春も各社から続々リップカラーが登場するけれど、個人的に「今はこういうものがつけたいな」と感じたのが、トリートメント効果に優れた「透けリップ」。「アディクション(ADDICTION)」から登場する全9色の“リップ オイル プランパー”は、唇に潤いとツヤ、そして淡いニュアンスを添える心地良い感触が印象的。「ジバンシイ(GIVENCHY)」の“ランテルディ・リップスティック No.01”は、しっとり唇を包み込み、唇本来の色を透かしながら微細な輝きを添えるニュアンスブルー。双方共にストレスフリーの使い心地と、マスクを外した時にも「唇本来の立体感が際立つ」効果が嬉しい。
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コロナ禍を経て、リップを使う機会が減ったように「一時的に変化したこと」もあれば、スキンケアで肌を立て直す重要性のように「本質に気づかされたこと」もある。たぶん、私たちは2020年の経験から、今後「自分に本当に必要なもの」を、よりシビアに選択していくことになるだろう。
そういう意味で、この1年間で最も価値観が変わり、女性たちの目下最大の関心事といえば「ベースメイク」にほかならない。次回のコラムでは、ベースメイクの未来について考えたい。