伊藤忠商事(以下、伊藤忠)は今年5月、70年の歴史を持つ月刊広報誌を季刊広報誌「星の商人」に刷新した。巻頭の対談企画に笑福亭鶴瓶やマツコ・デラックスが登場したり、海外駐在員がオススメフードを紹介したする全70ページで、広報誌の枠にとらわれないユニークな記事が並ぶ。
同社はこれまで「伊藤忠マンスリー」という社内報を約70年発行してきた。グループ内で起こったニュースを社員に報告することを目的とし、「『いつこんなことが起きた』『今度こんなことをします』など小学校の壁新聞や学級新聞のようだった」と話すのは、「星の商人」発行責任者の小林文彦・代表取締役専務執行役員CAOだ。「メディアが発達し、社会のあり方がガラッと変わったのに、社内報は全く変わっていなかった。どうせ作るなら、しっかりと読者の心に刺さり、何度も読み返したくなるものを作りたい」と刷新の経緯を語る。
創刊号では、落語家の笑福亭鶴瓶と岡藤正広伊藤忠商事会長がお好み焼き屋でざっくばらんに対談する巻頭企画を実施。続く2号目ではタレントのマツコ・デラックスを起用し、同社への印象ビジネスの醍醐味を聞いた。「業務報告で終わっては誰も手に取らないので、誰もが楽しめるコンテンツを作る」という強い姿勢が見て取れる。
「星の商人」を手掛けるのは、「CBI(コーポレート ブランド イニシアティブ)」という新部署だ。今年1月に社内タスクフォースとして始まり、10月に実績が認められて正式な部署となった。メインメンバーは小林専務を含む3人。設立から間もないが、企業ブランドの拡大をミッションにさまざまな企画を走らせる。「普通に紙媒体を出しても面白くない。タイムリーな情報はオウンドメディアで掲載し、紙媒体にQRコードを差し込んだり、SNSへの出稿も積極的に行って若年層にもアプローチしたりしている。発行部数は3万だが、実質はもっと多くの読者がいる。『星の商人』を起点に、ワクワクする仕掛けを考えていきたい」。
伊藤忠商事のようにBtoB事業を主軸にしている企業は、具体的な事業内容は知られていないことが多い。「われわれはここ数年で業績を大きく伸ばし、業界トップを争う商社に成長している。どんな仕事をしているか、どんな人が働いているかを明確に示すことは、社会的責任でもある」。