品ぞろえと編集力で人気を集める古着店「ラグタグ(RAGTAG)」は、全国17店舗やウェブサイトを通じ、消費者から古着(靴やバッグを含む)を買い取って販売している。古着のため商品は一点ものばかり。その全ての商品が集まる東京都国立市の「国立商品センター」は、ブランド古着を循環させる「ラグタグ」の心臓といえる場所だ。膨大な数の一点ものの商品はどう管理されて、消費者に届くのか。
国立市の郊外にある国立商品センターの建物は、3フロア構成で約1万平方メートル。全国の消費者から買い取った古着が1日平均2000点届き、真贋チェックやコンディション確認などを経て、最終的な価格が付けられる。店舗とECの在庫が一元化されているため、全商品のささげ(採寸、撮影、原稿)作業もここで行われる。常時30万〜40万点の古着を保管し、各店舗に出荷したり、ECを通じて消費者に配送したりする。約110人のスタッフが働く。
「ラグタグ」の商品はブランド古着で、目の肥えた顧客の売り買いによって成り立っている。他のリユース店に比べて客単価も高い。同社ECの人気ブランドランキングのベスト3(12月29日時点)は、メンズが「コム デ ギャルソン・シャツ(COMME DES GARCONS SHIRT)」「エンジニアド ガーメンツ(ENGINEERED GARMENTS)」「ビームス(BEAMS)」、ウィメンズが「トリコ コム デ ギャルソン(TRICOT COMME DES GARCONOS)」「サカイ(SACAI)」「ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)」。
独自の基準によって商品のコンディションを「新品同様」から「A」「B」「C」「D」の5段階に分類し、ダメージなども正直に記載することで信頼を築いてきた。メルカリに代表されるフリマアプリが浸透する中でも、ブランド古着の売り買いは「ラグタグ」で行いたいという人も少なくない。
偽物は絶対に入れない
入荷した古着はまずモード、ストリート、カジュアル、ビジネス、アウトドアといったジャンル別に分けられた後、専門知識を持つスタッフが真贋を見極める。店舗で買い取る古着は店舗スタッフがその場で真贋チェックをしているが、さらに厳しい目で疑わしいものを弾く。
上光治郎さんは店舗スタッフを経て、6年前から真贋のスペシャリストとして抜擢された。毎日、大量の商品を一つひとつチェックする。買い取られた店舗による値付けを修正したりするのも上光さんの仕事だ。
アウターの裏側に縫い付けられた品質表示タグのある部分を指差し、「この◯◯◯は真正品では見られないものです」と教えてくれた。品質表示のほか、素材、縫製、ファスナーなどの付属。真贋を見極めるポイントはいくつかある。「(企業秘密なので)具体的には話せませんが、本物にたくさん触れて、その特徴を頭と目に焼き付けることが大切です」と話す。時間があれば、ブランドの直営店に出向き、最新の商品に触れる。経験を重ねると「注意深く見なくても、大量の商品の中から疑わしい商品は自然と浮かび上がってくるようになります」。
日々カイゼンを繰り返す「ささげ」
真贋を通過した商品はささげに回る。
フロアの設備で最も目立つのは、照明によって白い光を放つたくさんの撮影機材だ。商品を平置きにして撮影する設備が8台、ハンガーにかけて撮影する設備が15台、帽子や靴などの服飾雑貨を撮影する設備も数台ある。
撮影は各設備で1人のスタッフが完結して行う。ハンガー撮影はマットレスを立てかけたような白い壁にシャツやワンピースを吊るす。スタッフはキャスターがついた椅子に座ったままで商品を整えたり、カメラを構えたり、パソコンで画像を確認したりする。「ラグタグ」を運営するティンパンアレイの桜庭邦洋ゼネラルマネージャーは「クオリティの高い画像が効率よく撮れるように、現場でたびたびカイゼンを重ねてきました。キャスター付きの椅子を使うのも、無駄な動きを減らしてスタッフの作業量を軽減するためです」と説明する。
採寸は今のところ1点ずつ袖丈や身幅を手作業で行っている。だが、ティンパンアレイと同じワールドのグループ企業オムニスの自動採寸テクノロジーの試験導入が一部で始まっている。写真を撮影すれば、自動的に採寸してサイズを割り出す。本格的に導入されれば業務効率は飛躍的に上がる。
商品情報の入力が終わった商品は保管フロアには移動する。広いフロアを埋め尽くす2段組のラックに、ハンガーにかけられた古着がぎっしり並ぶ光景は圧巻だ。30万〜40万点の古着がテイストやブランドごとに棚番号で整理されている。
新品を売るチェーンストアとは違い、店舗ごとの顧客特性に合わせて選ばれた商品がここから毎日出荷される。例えば都心のモードに強い店と、地方都市のカジュアルが求められる店ではMDを変えている。ECで注文を受けた商品もここから消費者に発送する。ECが更新されるのは毎日17時。掘り出し物を探す常連顧客のアクセスが集中するのもこの時間帯だ。