TikTok For Business Japanは、同プラットフォームのマーケティングの可能性を解説する無料オンラインセミナー「TikTok For Business Year-End Event 2020」を2020年12月16日に開催した。20年は新型コロナウイルスの影響で、人々の生活や働き方だけでなく、マーケティング界も大きく変化した。セミナーでは激動の1年を振り返り、新たな時代に流行を生み出して、ブランドビジネスに貢献するためのマーケテイングソリューションを約6時間、全14コマのボリュームで解説。多彩なゲストと切り口で、存在感を強めるTikTokへの出稿を検討する企業担当者の疑問や悩みに役立つ実践的な内容を届けた。
クライアント数274%!
幅広い年代に広がる「影響力」
オープニングでは、西田真樹TikTok For Business Japan代表が登壇し、20年の実績とビジョンを発表した。今年一年を振り返り「自社にとって難局の1年だった」としながらも、TikTokの登録クライアント数成長率は19年末比274%と急伸した。アプリのダウンロード数は世界規模で20億を突破し、ユーザーの年齢分布は25歳以上が52.3%に広がった。1日の平均視聴時間も42分から56分に伸びている。日本においてはTikTok流行語大賞になった「きゅんです」や楽曲「香水」のヒットが記憶に新しく、幅広い世代の“流行発信基地”としての地位を築いた年になった。これらの背景を踏まえて、西田代表は「(1990年代中盤以降に生まれた)Z世代に何かを伝えるときには、まずコトがあった上でモノがついてくる」と説明する。21年は「興味との出会いが購買につながるプラットフォーム」をスローガンに、ECとの連動を強め、興味から購買までをダイレクトに促すオリジナルのマーケティングをブランドとともに推奨していく。
“まだ見ぬ好き”に
出会えるTikTok
「WWDJAPAN.com」編集長の村上要をゲストに迎えた回では、ラグジュアリーブランドにおけるTikTok活用術とマーケティングの可能性を解説した。20年はコロナ禍におけるリアルイベント中止の影響から「イヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT)」のコスメキャンペーンを皮切りに、「ルイ ヴィトン(LOUIS VUITTON)」や「ディオール(DIOR)」が20年春夏のファッションショーをTikTokで配信するなど、ハイブランドとの取り組みが加速した。クリエイターによる投稿でも画角トレンドは、バストアップから全身を写したストーリー性のあるものへと進化し、従来から人気の購入アイテム紹介動画では、商品がより高価格帯になっている。これらの変化やTikTok独自のアルゴリズムなどにより、興味のある人にダイレクトに情報が届き、投稿者もポジティブで活発な反応がもらえる好循環が生まれている。
司会を務めた「TikTok For Business Japan」の廣谷亮ブランドストラテジーディレクターは、TikTokの魅力は「未知との出会い」とコメント。好きなアカウントをフォローしたり、キーワード検索をベースに情報を取得したりするのではなく、潜在と顕在どちらの興味にもリーチできるプッシュ型のTikTokでは、“まだ見ぬ自分の好き”に出会える可能性がアップする。
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Z世代を中心にしたTikTokは、ラグジュアリーブランドとの相性を懸念する担当者も多いが、訴求の目的は「憧れの醸成」とTikTok For Business Japanの中村千賀クライアント パートナーシップ アソシエート ディレクターは言う。商品を購入できる年齢になる以前から、ブランドの世界観を伝えることは、未来のロイヤルカスタマー化へとつながる。
一方で、村上編集長は「ファッション&ビューティ業界のデジタルマーケティングは、まだブランドの“認知”に重きを置いている段階。“興味喚起”のステージに立てているブランドは少ないのでは」と疑問を投げかけた。
本国主導のラグジュアリーブランドでは、ジャパン社独自のプロモーションを始動しにくい企業もある。しかし、中村アソシエート ディレクターは「インフルエンサーなら、日本で反響のある人物を起用してもいい、という案件が増えている」と補足。TikTokで活躍するクリエイターとのコラボレーションが「ローカライズの近道になるのでは」と言う。
Z世代には
「飾りすぎないリアル」が響く!
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ラグジュアリー&ビューティブランドのTikTok活用実例に関するセミナーの前後には、スペシャルゲストとしてマーケティングアナリストであり、信州大学特任教授の原田曜平や、アカウント開設からわずか5カ月でフォロワー100万人を達成したTikTokクリエイターの修一朗が登壇した。
最新の「TikTokユーザー白書」では、ユーザーの“比較・検討”を促す投稿よりも、その手前の“興味”に訴えかける投稿の方が、実は購買に結びつきやすい、という従来のマーケティング手法の動線を覆す仮説を立てている。原田は「興味から、ズドン」のキーワードで表現される「ユーザー白書」を解説し、SNSでの“映え疲れ”が叫ばれる中「飾りすぎない投稿が、Z世代には好意をもって受け入れら、逆にインパクトを与えられる」と説明した。
さらに修一朗がTikTok投稿のコツを指南し、“修一朗スタイル”と呼ばれるユニークなテンポとナレーション付きの動画について解説。50万ユーザーの壁を超えるには「ファンの需要やトレンドを取り入れる必要がある」として、①「初めての視聴者にも伝わる内容に」②「音やカット割で視聴者を離脱させない工夫を」③「ツッコミどころを散りばめる」④「視聴者コメントで動画の個性をアップデート」をファン獲得のための要点として伝えた。