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「私がグラニフの社長になったわけ」 “アパレルECの実力者”から経営トップへ 村田昭彦氏に聞く

 11月、あるニュースがファッションECの関係者たちを驚かせた。ファッションECの実力者として知られる村田昭彦氏が、「デザインTシャツストア(Design Tshirts Store)」を運営するグラニフの新社長に就任したからだ。村田新社長は、オンワード樫山(現オンワードHD)に新卒で入社後、ネットプライスやカフェグローブ・ドットコムを経て、2007年にベイクルーズに入社し、ECの担当役員として5年でECの売上高を5倍に引き上げたファッションECの実力者だ。18年9月にはDX担当役員としてオンワードホールディングスに入社するもわずか1年で退社し、去就が注目されていた。村田氏に話を聞いた。

WWD:ベイクルーズのECを成功に導き、オンワードHDに電撃移籍。常務執行役員に就任するも、わずか1年で退職。その理由は?

村田昭彦:もともとは新卒で入社した会社だったし、オンワードHDでの仕事はやりがいもあった。だが、やりたいことがあって退職した。ただ、コロナ禍などいろんなことが重なって、結局は長期休暇のようになっていた。

WWD:その期間は何を?

村田:子どもに朝食を作ったり、一緒に遊んだり、オンワード時代に付き合いで始めたゴルフが楽しくなって練習場に行ったり。プログラミングの勉強なんかもしていた。最高に楽しかった。ときどきEC関連のコンサルティングの仕事も請けたりもしたが、収入だけを考えるならフリーでコンサルティングを請け負った方が断然いい。

WWD:グラニフの社長に就任した経緯は?

村田:20年1月に買収してグラニフ社のオーナーになっていた投資ファンドの丸の内キャピタルからオファーを受けた。他にも大手企業のEC関連など並行していくつかオファーをもらっていたが、グラニフの仕事の内容が一番魅力的だった。経験したことのない経営トップという仕事も魅力だったし、グラニフという企業自体のポテンシャルも非常に高い。何より丸の内キャピタル側の、短期ではなく中長期的に企業価値を高めたいという考え方に共感した。7月から顧問になり、9月25日付で代表取締役CEOに就任した。

WWD:グラニフは19年6月期の業績を官報で公表していて、売上高107億円、営業利益8億8700万円、純利益2億4200万円。ベイクルーズやオンワードと比べると企業規模は大きくはないが、経営トップというのは初めての経験だ。不安は?

村田:不安より(初めての経験に)チャレンジできることへの喜びの方が大きい。先ほども言ったようにグラニフのビジネスモデルはポテンシャルが非常に高い。消費者へのNPS調査をすると、「グラニフ」のポイントの高さは際立っていて、実はショッピングセンターで同じフロアに並ぶ「無印良品」や「ユニクロ」よりもずっと高い。

村田:多種多彩なグラフィックを軸にした「グラニフ」のビジネスモデルはなかなかユニークで、老若男女問わず幅広い層がターゲットでありながら、それぞれの商品、例えばアニメのキャラクターTシャツ一つをとっても有名なものから無名のものまでバラエティに富んでおり、かと思えばカルト的な人気を誇るクリエイターのハイセンスなグラフィックTシャツもあり、一つ一つの商品自体はニッチで成り立っている。しかも一般のアパレルと異なり、セールをほとんどしないので利益率も高い。

WWD:今後の戦略は?

村田:いまはTシャツを軸にパーカやワンピースなどのアパレルが中心だが、今後はバッグやシューズ、雑貨、インテリアなどにも商品の幅を広げ、“グラフィックを用いたプロダクトブランド”にシフトさせる。消費者調査などをしても「グラニフ」の人気を支えているのは、あくまでグラフィックであって、モノ自体はキャンバスというか媒体にすぎない。なので媒体=商品をアパレルに固定する必要はなく、もっと広げていけるはずだ。

WWD:小型店舗・高効率が「デザインTシャツストア グラニフ」の特徴だったと思うが、店舗のサイズはどうなる?

村田:アイテム構成を広げるため、店舗のサイズは大きくなる。現在ファッションビルや郊外大型モールに出店している店舗の標準サイズは20坪(約66平方メートル)、月坪効率は35〜45万円ほどだが、今後は40坪くらいに広げていく。来年のGW明けあたりから、新型店舗の出店をスタートする。店舗は年間で10店舗くらいのペースで出店していく。もちろん定番品をプロパー(定価)で売り切るというビジネスモデルは堅持する。デジタル技術を活用して1〜2週間で受注生産する仕組みを取り入れたり、ECにも力を入れていく。

WWD:村田社長の目から見てECは?

村田:これからですね(笑)。現在でもEC化率は15〜20%くらいあるが、売り上げよりデジタルマーケティングの有機的な活用やサイトのUI/UXの改善、在庫連動など、ベーシックにやらなきゃいけないことが山積みだ。もちろん店舗とのOMOなども積極的に仕掛けていきたい。その結果として売り上げも伸びるだろう。その意味では伸びしろが大きい。いまは商業施設の要請などもあってセールも一部行っているが、今後はそれもやめていきたい。

WWD:中長期的な目標は?

村田:詳細は申し上げられないが、3〜5年で売上高を2倍以上に引き上げたい。数字だけ見ると野心的にも見えるかもしれないが、グラニフにはそれだけのポテンシャルがある。大手アパレルのEC担当役員として日本のアパレル業界を見てきたが、“ユニクロ一強”状態は揺るぎないと思っていたが、グラニフを通じて脱アパレル型ビジネスモデルを進めればチャンスはあると思っている。顧客にとって嬉しい事、社会にとっていいことを追求していけば、目標達成の難易度はそこまで高くないはずだ。

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