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コロナ禍の女性労働者の苦境 衣類産業の労働力の80%を占める

 国際労働機関(International Labour Organization以下、ILO)によると、衣類産業で働く女性は、新型コロナウイルスの感染拡大で差別やハラスメントの増加、賃金格差の拡大、不平等な家事や育児、介護の強要に直面している。続けて新型コロナが収束したとしても、これらの格差が縮まる可能性は低いと報告している。効果的な改善措置がなされなければこのような不平等な待遇は拡大し、貧困問題解消とジェンダー平等におけるコロナ禍前の前進を無にする可能性がある。ILOはその一因に、コロナ対策の議論の場に圧倒的に女性の代表が不足していることを挙げている。

 ジョニ・シンプソン(Joni Simpson)ILOアジア太平洋地域シニア・ジェンダー・スペシャリストは、「女性は衣類産業の労働力の80%を占めているため、パンデミックによる大きな影響を当初から受けている。さらに職場だけでなく、家庭内での労働やジェンダーに基づく役割が課されている」と言う。女性がパンデミックで受ける短期的なものから長期にまで及ぶ課題に対処できるよう、ILOは意思決定の場にあるものが、さまざまな属性のニーズと現実問題に基づいてジェンダーを考慮した措置を施策していくことを推奨する。各国は金銭的援助活用の推進、性別にかかわらず利用できる社会的セーフティネットの設立と維持に焦点を当てるべきだと主張する。

 例えば衣服工場が運転再開をしたときに女性が安心して働けるよう、責任者は家事や介護における無償のケア労働の蔓延解消に取り組み、サポートを提供する必要がある。コロナ対策について考える際には、あらゆるジェンダーの人々が職場、家庭、自身のコミュニティーでどのように影響を受けるか想像するべきだという。中でも女性への暴力やハラスメントが増加していることから、レギュレーションやマネジメント、管理職のトレーニングなど、安全で尊厳のある職場環境を作る取り組みを増やすことが重要となる。ILOは職場のシステムや生産体制の変化が、女性には異なる安全上のリスクを起こす可能性があることに特に注意を払う必要があると述べた。

 また女性は介護や地域社会の一員としてコロナ対策の最前線にいることが多いため、政策決定の際に女性にしかるべき発言権があることが大事だと言う。ILOは、「女性が参加するために、ジェンダーに配慮された機会を提供するべきだ」との見解を示した。労働者や雇用主、バイヤー、政府などは、意思決定や話し合いの場などあらゆる局面における女性の関与が、新型コロナによってより一層厳しいものになっているという可能性を考慮しなければいけないと呼びかけている。

 ILOと世界銀行グループのメンバーの国際金融公社によるパートナーシッププログラムであるベターワーク(Better Work)のジェシカ・ワン(Jessica Wan)=ジェンダー・スペシャリストは、「政府や企業、ステークホルダーなどは、新型コロナによるパンデミックが女性や男性の労働者に及ぼす影響を多面的に理解するべき。それをもとにスマートで、サステナブルで、ジェンダーに包括的な政策を考えていくことが重要だ。新型コロナによる危機的状況では、すでにある格差がより広がる恐れがあり、衣類産業の社会的および経済的な環境の改善は進まないだろう」と語った。

 ILOの調査では、アジアの主要な衣料品生産国の衣服の輸入量は、パンデミックにより2020年上半期に70%急落したという。その結果工場での生産能力も低下し、労働者の解雇が急増した。アジア太平洋地域では、19年に約6500万人が衣類産業で雇用されており、これは世界全体で75%を占める。ILOは、衣類産業で働く人はパンデミック以降平均して2〜4週間分の仕事を失い、現在生産ラインに戻っているのは5人に3人だけだと見積もった。

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