日本ロレアルが展開する「ランコム(LANCOME)」は、ロングセラー美容液“ジェニフィック アドバンスド N”や、2020年のベストコスメに名を連ねた化粧水“クラリフィック デュアル エッセンス ローション”の好調、さらには定期便の拡大など、コロナ禍でも存在感を見せつけた。2020年7月1日付でランコム事業部長に就任したスー・ジョン・リー(Sue Jong Lee)氏は、「ビギナーズラック」と笑顔を見せる。日本ロレアルの中でも大きな売り上げを占める「ランコム」のさらなる飛躍は、リー事業部長の手腕に掛かっている。
WWD:これまでの簡単な経歴と、日本の事業部長としてのミッションを教えてください。
スー・ジョン・リー事業部長(以下、リー):ロレアルグループで約20年の実績があります。フランスで約10年、韓国、中国といったアジアで約10年、ビューティマーケットを見てきました。一昨年に今回のオファーがあったのですが、日本のマーケットは洗練されていて、お客さまとも距離も近い、密接な関係を築いている市場だと考えていたので、当時のミッションは、伝統的なことを重んじ店頭でのサービスに重きを置くものでした。ただ昨年のパンデミックによりミッションも変わりました。バーチャルな体験などデジタル化を進めていくことが私のミッションだと思っています。
WWD:具体的にデジタル化のミッションとは何ですか?
リー:伝統を取り入れながらスピーディーにデジタル化することです。たとえば昨年は初めてバーチャルイベントを実施しました。11月にパリのブティックを彷彿とさせるバーチャルショップを期間限定オープンし、プレス向けお披露目会には日本のミューズである女優の戸田恵梨香さんも参加してショップを体験してもらいました。今回のバーチャルショップは、パリ本社とも準備を進め、デジタルでもラグジュアリーで質の高いイノベーションを発信できたと思います。
WWD:バーチャルショップ以外にも面白い訴求を行なっていますね。
リー:たとえば、大型モニター付きのサンプリング専用ベンディングマシンを「ランコム」がコスメブランドで日本初導入(20年10月20日時点)したイベントを東京・原宿の「アットコスメトーキョー(@COSME TOKYO)」で行い、喜んでいただきました。
WWD:デジタル化への投資は進めますか?
リー:今、オフラインのお客さまもオンラインで検索しどちらでも買い物をする時代で、シームレスで境目がありません。19年は広告宣伝費としてオフライン、オンラインで半々でしたが、20年はオフライン3割、オンライン7割にシフトしました。プリントを減らしているというのではなく相対的に投資を拡大しており、よりよい環境を作っていきたいと思っています。パンデミックなど厳しい状況ですが今、チャンスではないでしょうか。デジタル化をミッションとしていますが、紙も大事ですしクオリティーが高いと感じでいます。今後はオンラインとか、オフラインとかを意識しない時代になると思っています。
WWD:今後の方針を教えてください。
リー:製品では、昨年の売り上げが前年比40%増と成長を続ける美容液“ジェニフィック アドバンスド N”から新製品が登場します。そのほか、最高峰ライン“アプソリュ”の強化、グローバルミューズのアマンダ・サイフリッド(Amanda Seyfried)のビジュアルでメイクアップも発売します。またわれわれはビューティテックにおいてリーダーです。肌測定、ファンデーションの色などの測定体験を推進するなどでビッグデータを保有しており、お客さまに役立つ形で活用していきます。
WWD:最後に、リー事業部長にとって日本とはどんな存在ですか?
リー:実は以前から日本に来たいと思っていました。なので一昨年、ランチをしている時に日本へのオファーを受けたのですが、何の仕事かも聞かずに「イエス」と答えてたぐらいです(笑)。私は韓国出身ですが、祖父は日本の大学で勉強していましたし、祖母も日本で仕事をしていたようで、日本とはとても縁があります。日本に来れたことを大変うれしく思っています。