REPORT
不気味な停滞。ラフの次なる一歩は、どちらへ?
「ラフ・シモンズ」の2016年春夏メンズは、過去数シーズンの総決算のようだ。会場は、半年前と同じ、メトロではたどり着けない、ギリギリパリ市内というところ。そこに見上げる形のランウエイを作り、モデルたちは高速でその上を駆け抜けていった。
コレクションは、半年前同様、手作業によるひと手間により、アグリー・ビューティ(醜さの中に潜む美や強さ)を表現したコートが中心だ。ハトメを幾何学状に打ち込んだコートからはプロフェッショナルな美しさを感じるが、例えばマキシ丈のコートに描かれたチェック柄は、1点1点ローラープリントで描かれたようでところどころかすれている。また肩口の格子柄は、リボンのような素材を一つ一つ縫いつける形でも描かれており、“手作業ならではの温もり”を感じるが、どちらかと言えばシャープなムードをあえて削いでいるような存在。前衛的なフォームを提案するモードと、不思議なバランスで混在している。
フォームは、オーバーサイズゆえ、そして、コートの前合わせが胸元にしかないがゆえ、歩くたびに風をはらんで、裾に向かうと大きく広がるAラインが特徴だ。足元は、スリムテーパード、ひざ上ショーツ、もしくは、折り返しがたっぷりのスーパーフレア。スーパーフレアはスレスレではなく、地面に思いっきり着いてしまうアン・リアルな長さで、もはや靴はまったく見えない。そんな姿のモデルは、大きなPVCチェーンのバックパックを肩にかけ、頭にはレトロな生地の頭巾を被り、下を向きながらランウエイを歩く。その姿は異様で、今回もおどろおどろしい。
とはいえ、前回、今回のコレクションは、過去に比べると目新しさは少なく、落ち着いている。この停滞は、何を意味しているのか?最近のコレクションは、ラフにしては珍しく、さまざまなシルエットが混在している。そのあたりが整理され、新たな提案に繋がっていくことを期待したい。