※この記事は2020年10月15日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
常套句にはしたくない「新型コロナの影響で」
「またですか!?」と思うのは、「新型コロナの影響で」というフレーズです。なんだか常套句になってきちゃった印象ですね。
それが決定打だったのは、わかります。観光や飲食のように、コロナがなかったら全然違う未来が待っていたケースもあるでしょう。リンク2本目の「鎌倉シャツ」の場合は、ニューヨークという立地の影響があまりに大きく、これは本当に「新型コロナ(とBLM)の影響」です。でもアパレルの場合、多くは「破たんや終了の理由」ではなく、「破たんや終了が早まった理由」なのでは?と考えます。なのに「理由はコロナ」と、自分たちの力ではどうしようもなかった事態に責任転嫁するのは、破たんや事業終了という再スタートでもあるニュースの第一歩として常套手段とすべきではないと思うのです。
破たんの中で最も重い「破産」だって、事業主さえ数年たてば再スタートを切るワケです。「事業終了」だったら、数週間・数カ月後には新たな仕事に取り組むケースも多いでしょう。その時、前の仕事の終了の理由を不可抗力の「新型コロナ」と捉えている場合と、もっと別のどうにかできたかもしれないモノと捉えている場合では、本人の心構えは大きく変わります。前者なら「仕方ないこと」で終わってしまうかもしれません。でも後者の場合は、「同じ失敗は繰り返さない」「あの時、何をしていれば?」「今度は、一体どうやれば?」という思考回路に変わるはず。破たんや事業終了はツラいことだからこそ、そこから何かを掴み、次につなげるべきだと思うんです。だから「理由は、新型コロナ」だけはダメ。業界の活性化を願う私たちも、それ以上を伝え、業界の将来の糧にしようという覚悟が必要ですね。
私たちは、残念なニュースにフタをしがちです。でも最近は、それで良いのかしら?と思っています。そういうニュースにフタをして業界を美しく装うのは、未来を託す後輩のためにならないのではないか?今は、そんな気持ちです。
社会部の事件記者だった頃、「亡くなった●●さん」という説明文をつけて紙面に掲載したい写真(業界では「顔首」と言います)を探し続けたものの、どうしても見つけられず、最後の手段として遺族の家を訪ねて塩を撒かれたことがあります。泣きながら記者クラブに戻った私を先輩は、「事件・事故を掲載するのは、再発を防止するため。その意義がわかれば、乗り越えられる」と慰めてくれました。正直私は「その意義」を“自分ごと”化できず、前職はあっという間に辞めてしまいましたが、今は、先輩の言葉がチョットわかります。「再発防止」のためには、残念なニュースもちゃんと伝えなくちゃならない。だから願わくば「再発防止」のため、残念なニュースの当事者にもちゃんと伝えて欲しいと思うのです。
メディアの都合、でしょうか?そうかもしれません。そもそも「新型コロナの影響で」なんて“聞こえ”の良い言葉を安直に選んでいる面も否めません。でも少なくとも我々の多くは、「未来のために、今の残念なニュースに向き合っている」つもりです。
「未来を託す若手のために」。一事が万事、こう考えると変えるべき、変わるべきことってたくさんありそうですね。
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