REPORT
交差する東京とメキシコ 写真とファッション
「イッセイ ミヤケ メン」の2016年春夏コレクションは、都市の色を切り出し、そこに住む男性を彩った。色を切り出すために用いたのは、フォトグラファーによる、実際の写真だ。高橋悠介がデザイナーに就任以来ショーの終盤を彩っている、コットンシャツやショーツへのインクジェットプリントはもちろん、それをさまざまなテクニックでち密に、しかし、その努力を感じさせないほど鮮やかに描いたのが、このブランド“らしい”。
序盤は、1987年生まれの写真家、水谷吉法が東京に生息するインコを撮影した「TOKYO PARROTS」の写真をチョイス。ファーストルックは、大空を飛ぶインコの群れをジャカードで描いたステンカラーコートだ。描いたインコは飼育されているものではなく、野生化したもの。カワイイというよりは、都会を生き抜く逞しさに溢れており、それがステンカラーコートをメンズの一着として成り立たせている。その後は、写真をプリントした不織布を織りこんだサマーツイードやニットが続く。
中盤、都市は東京からメキシコに移った。このパートの特徴は、鮮やかなカラーリング。ターコイズブルーやフューシャピンク、スカイブルーなど、鮮やかな色で全てを染めたノースリーブのチェスターやひざ上丈のショーツ、シャツなどがインパクトを放つ。シャツは、袖裏を別の色に染め、ロールアップすると1着の中でカラーブロッキングが楽しめる。フィルムのような素材にネオンカラーで連続する曲線を描いたモッズコートなど、このパートはエアリーかつスポーティーだ。
鮮やかな色、鳥などのモチーフを使ったコレクションは、ともすればフェミニンになりがちだ。しかし今シーズンは、写真の力強さや、スポーツの躍動感などを借り、力強かったり爽やかだったり。同世代の写真家とのコラボレーションが奏功した。