「トム フォード タイムピース(TOM FORD TIMEPIECES)」は、海洋プラスチックごみを再利用した時計“トム フォード・オーシャン プラスチック・タイムピース”を2020年12月初旬に発売した。さらにこれに合わせて、環境保護団体と組んで新たなプライズを創設。レジ袋などに使われる薄膜プラスチックの代替素材を開発した人に100万ドル(約1億円)の賞金を授与するという。アジアで唯一の単独インタビューの機会を得て、トム・フォード本人に“世界初の海洋プラスチックごみ製高級時計”を作った意図、プライズを足掛かりに描くサステナブルな未来について聞いた。(この記事はWWDジャパン2021年1月4・11日合併号からの抜粋です)
WWDジャパン(以下、WWD):“トム フォード・オーシャン プラスチック・タイムピース”は製品そのものにとどまらず、素材となる海洋プラスチックごみの輸送をカーボンニュートラル(二酸化炭素排出ゼロ)に努めたり、スイスで生産する際にも太陽エネルギーを使用するなど、取り組み全体をサステナブル化している。今後、サステナブルなプロジェクトの設計もデザイナーの務めとなるのか?
トム・フォード「トム フォード」デザイナー(以下、トム):デザイナーとしての私の責務は、時を経ても変わらない真のラグジュアリー製品をお客さまに提供することだ。私は“倫理的なぜいたく”こそ最大のぜいたくだと考えている。海洋汚染は、現在世界が直面している最大の問題の一つだ。2050年までに、海には魚よりプラスチックが多くなるとの試算もある。海洋プラスチックごみを用いて時計を製作することで、われわれは積極的に海の浄化を支援し、リサイクルプロセスの一端を担いたかった。しかし私は、もう一歩前進したい。なぜなら毎年900万tのプラスチックごみが海に流入している事実を目の当たりにして、リサイクルが長期的な解決策ではないと感じ、私自身がソリューションになりたかったからだ。そこで非営利環境保護団体ロンリー・ホエールと提携して“トム フォード プラスチック イノベーション プライズ”を創設し、レジ袋などに使われる薄膜プラスチックの代替となる大量生産可能な新素材を開発した人に100万ドル(約1億円)の賞金を授与することにした。25年には当該製品を市場に投入する予定だ。
WWD:“トム フォード・オーシャン プラスチック・タイムピース”のデザインが非常にシンプルで驚いたが、意匠に込めた思いとは?
定期購読についてはこちらからご確認ください。
購⼊済みの⽅、有料会員(定期購読者)の⽅は、ログインしてください。