TSIホールディングスが全社を挙げたデジタル化を推し進めている。2020年9〜11月期はリアル店舗の閉鎖を伴う構造改革を進めてきたが、販売のECシフトなどが奏功して営業増益(前年同期比4.4%増の21億円)となるなど一定の成果を得た。新たな施策として、スタッフの投稿コンテンツを基軸にしたECモールの立ち上げなどを計画。それを下支えする事業部横断のデジタルチームも組織し、リアル店舗に依存しない収益体制の確立を目指す。
同社は21年2月期で国内外計243店舗を撤退する構造改革を進めている。20年9〜11月は新型コロナと店舗数減の影響で全体の売上高は減った(前年同期比6.9%の409億円)ものの、販管費の削減(同9.5%減)とEC売上高の伸長(同14.2%増)が増益に貢献した。通期見通しについても「販売のECシフトが進んだことで、新型コロナの影響を受けたとしても利益面で大ケガはしないはず」と上田谷真一社長。
ECの拡販には、ヒトの力を活用したデジタル施策が寄与した。20年9月〜11月において、「マーガレット・ハウエル(MARGARET HOWELL)」「パーリー・ゲイツ(PEARLY GATES)」などでは、英国発のアプリ「ヒーロー(HERO)」によるオンライン接客を経たEC販売の成約率が通常のEC販売と比較して約10倍になった。「オンラインでも接客をきちんとすれば成約率も客単価も確実に上がる」(上田谷社長)。SNSでのスタッフ投稿を経由した売り上げは自社EC売上高の約35%を占めた。今後はデジタル上での1対1のサービスをさらに強化すべく、3月には同社のECモール「ミックスドットトーキョー(MIX.TOKYO)」を、店舗スタッフのコーディネート投稿をメインコンテンツに据えてリニューアルする。
既存店舗のオムニチャネル化による利便性向上・在庫最適化も進める。「(構造改革で)残った店舗はデジタルの拠点になり、極めて便利で“ぜいたく”な場所になる」。EC在庫を店舗に引き当てて販売する客注アプリは、全店舗の約半数(454店舗、21年11月時点)ですでに導入が済んでおり、今後も対応店舗を拡大する。
同社は事業子会社ごとに分かれていたEC関連部署をグループで一本化(20年9月)するなど、デジタルのノウハウと運用を水平展開する組織作りも進めてきた。これをさらに強固なものとすべく、今年と来年の3月の2段階に分けて行われるグループ再編を経て、「新会社TSI」の直轄組織として「デジタルビジネス(EC・デジタルマーケティング)部」と「DX部」を新設する。