フリマアプリ「メルカリ」の普及で、個人間による2次流通市場が爆発的に拡大している。ブランドの直営店や専門店といった企業による1次流通側の手を離れた、2次流通はある意味で完全な自由市場であり、需要と供給のバランスで価格が左右される。その象徴的な存在が、スニーカーを株になぞらえたプラットフォームで、世界的な急成長を続ける米国の「ストックX」だろう。スニーカーヘッズのジョシュ・ルーパーが創業した「ストックX」は、単なるマニアのためのプラットフォームなどではなく、有力なベンチャーキャピタル(VC)なども出資する有望なスタートアップ企業になっており、昨年12月には約280億円を調達し、企業価値は約3000億円に達している。(この記事はWWDジャパン2021年1月18日号からの抜粋です)
スニーカーがまるで株券のような価値を持つのは、市場の裾野の広さと熱狂的なファンが存在しているからで、それはナイキ(売上高:約4兆円)やアディダス(同:約2兆8000億円)のような巨大企業の強力なマーケティングの副産物にほかならない。これはラグジュアリーブランドにもいえることで、こちらは自ら美術館やオークションハウスを持ち、ハイカルチャーのシステムと結び付くことで、自らのブランドの2次流通での価値を高めている。
しかし一方、ファッションの魅力はそうした巨大な資本だけがもたらしてきたものではない。有名無名、大手中小にかかわらず、数多のブランドやデザイナーたちが新たなファッションを生み出してきたが、2次流通市場が拡大する中で、中小のブランドのアイテムはこぼれ落ち、歴史の狭間に消えている。試しに20年前の「WWDジャパン」に登場した東コレブランドを、メルカリとヤフオクで検索してみればいい。数千円も出せば、かなり状態の良いコレクションを購入できるはずだ。ファンにとってはありがたい話ではあるが、つまりは社会的な価値はその程度ということでもある。
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