※この記事は2020年11月12日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
Whatからhowへのシフト
今週発売の「WWDジャパン」に伴う、MUJI特集担当記者の座談会を面白く拝読しました。一番「そうだねぇ」と思ったのは、ビューティを担当する中村記者の「普段、化粧品の取材をする際は『商品開発にあたってどのようにマーケティングしたか』『どうトレンドを取り入れたか』『それをどう宣伝するか』といったことを聞きますが、今回の取材では『本当に生活に必要なものだから化粧水を開発しました』といった話で、取材がいつものように進まなかったんですよ」の箇所。コレMUJIに限らず、最近のブランドやクリエイターに下手な質問をすると返ってきてしまう「ありがちな答え」な気がしています。決してMUJIが特別ではありません。
「必要だから、作った」。当たり前の話で、それ以上でも、それ以下でもありません。だから「なぜ、作ったんですか?」って聞いちゃうと、中村記者が戸惑うような答えになっちゃう。そこで私は最近、「なぜ、作ったんですか?」ではなく、「なぜ、必要だと思ったのですか?」「その意思は、モノづくりの中でどう反映を?」とか「その想いに共感してくれるのは、どんな人?」、そして「共感してもらうため、どう伝えている?」などを聞くようにしています。結果返ってくるのは、「なぜ作る?」や「どのようにマーケティング?」「どう宣伝?」と投げかけがちな我々が期待する回答に近づき、記事として、ちゃんと成立するんです。
こんな時に大事なのは、「what(何を?)からhow(どうやって?)にシフトしているのかな?」と思います。そして、もし、このシフトが本当に進んでいるのだとしたら、「what」の事ばかり考えてきたファッション&ビューティ業界にとって大きなチャレンジです。もちろん「what」は大事。いや「what」が完璧だからこそ「how」の議論ができるとか、「how」を積み重ねたからこそ完璧な「what」が誕生するというワケですが、「how」ありきの「what」、もしくは「what」の背景にある「how」のコミュニケーションが大事です(この1文、難易度高いですねw)。「how」で共感してくれた消費者は、「what」を盲目的に信じる気もします。
「how」へのシフトは、大変です。「what」なら伝え方はある程度画一的でOKかもしれませんが、「how」の伝え方はさまざま。相手によって、タイミングによって、メディアやチャネルによって、伝える人によって変わるでしょう。めんどくさいですねぇ(苦笑)。でも、楽しそうでもありますねぇ(笑)。1人で「how」の伝え方を数多く考えるのは、大変かもしれません。そう考えると、「how」の伝え方をたくさん考えるには、大勢が薄~く参画するチーム作りが望ましいのか?思考は、そんな組織論にさえ及んでいます。
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