「CEO特集2021」に登場するファッション企業19社、ビューティ企業28社のリーダーたちの言葉を、デザインやアートの世界で活躍するイノベーターたちはどう読むのか。KESIKIの石川俊祐氏、アーティストの福原志保氏、コンテクストデザイナーの渡邊康太郎氏にインタビューを読んでもらい、オンラインで感想を語り合ってもらった。3人の独自の視点で企業と社会を展望する。(この記事はWWDジャパン2021年1月25日号からの抜粋です)
WWD:ファッション企業19社、ビューティ企業28社のCEOが20年後の未来像を語ったが、各社のビジョンをどう思った?
石川俊祐(以下、石川):読んで感じたことと、僕たちが普段考えていることとの共通点を話したい。まずはパーパス、ビジョンを持って、走るべき先の未来を見据えていたり、ブレない軸を持って意思決定したりする企業は、新しい何かを生み出したい人にとって良い刺激になるということ。企業としてのアイデンティティーが求心力になって人が集まる。例えば「SK-Ⅱ」は、自分らしさと社会性、文化性とビジネスを一緒に考えている。自分らしさを軸に、会社が何を作って、何のために商いをしていくのか。文化性、社会性に基づく自分らしさと、経済性をつなげている。
福原志保(以下、福原):次はどの会社と仕事がしたいかと考えたとき、CEO本人が文化を持っている企業と働きたいと思った。石川さんがおっしゃる、企業のアイデンティティーにつながっている。会ってみたいと思ったのは、かならぼの吉濱佳奈社長。言葉にリアリティーがある。「リサーチして出てくるのは、顕在化したニーズ。潜在的なニーズをつかむため、社内外で話を聞くことを大切にしている」と語っていた。バーに行って女の子と話すというのが、リアリズムなのかもしれない。自分たちは動かずに、マーケティング会社を使ってデータを集めている企業が多い。だからCEOは、数字の話ばかりする。自分の足を使って得た情報は、自分ごと化している情報。他人も自分ごと化しやすい。この人が提供する商品なら私も使ってみたいと思い、ネット検索してしまった。
WWD:パーパスを持ち、文化性とビジネスをどう結びつけるかだ。
石川:さらに、そこに循環が入る。Bコープのような話はあまり出てこなかったが、今後問われるのは何かしらのサーキュラー(循環)システム。素材の循環も大事だが、物を長く使って誰かに受け渡すこと、長く愛することも循環の一つだろう。仕組みからサイエンスでの素材開発まで、どう取り組むのか。われわれの会社は、アダストリアが昨年設立した子会社に立ち上げ時から関わっている。サステナブルなブランド事業を展開するための子会社だが、サステナは外せないところだ。
渡邉康太郎(以下、渡邉):確かに社会課題に触れた企業が複数あった。カラーズの橋本宗樹社長は、6つの社会課題(地球環境・地方衰退・貧困・少子高齢化など)を挙げていた。コーセーの小林一俊社長も、売り手、買い手、作り手、世間、地球、未来という、全方位が恩恵を受ける“六方よし”の経営が必要」という。企業や組織の最低限の責任範囲が広がっている。
定期購読についてはこちらからご確認ください。
購⼊済みの⽅、有料会員(定期購読者)の⽅は、ログインしてください。