カナダ発のラグジュアリーECのエッセンス(SSENSE)はこのたび、アーティストやクリエイターなどとコラボレーションして、アパレルや雑貨を制作するプロジェクト「エッセンス ワークス(SSENSE WORKS)」を発足した。第一弾として黒人劇作家でクィア(男性にも女性にも区分されない独自性)のジェレミー・O・ハリス(Jeremy O. Harris以下、ジェレミー)と協業し、ジャケット(3万9500円)やシャツ(3万3500円)、パーカ(3万9500円)、スカート(3万7500円)、ソックス(4500円)などを発売した。「エッセンス ワークス」立ち上げの経緯やジェレミーとの協業の理由などをエッセンスのソニア・トマス(Sonya Thomas)=ブランド開発部門シニアディレクターに聞いた。
WWD:「エッセンス ワークス」を立ち上げた理由と狙いは?
ソニア・トマス(以下、ソニア):エッセンスの見方は、ニューラグジュアリーやEC、クリエイティブプラットフォーム、テック企業など人によってさまざまです。「エッセンス ワークス」では、クリエイターのクリエイティビティをエッセンスというフィルターを通して表現するプラットフォームを提供したいです。ジェレミーはジャンルを超えた創造性と文化的影響力を体現していて、世に伝え、拡散したいと思いました。私たちはジェレミーの革新的な作品には注目しており、「エッセンス マガジン(SSENSE MAGAZINE)」3号目の表紙などのプロジェクトを共にすることで関係性を深めてきたんです。
WWD:コレクションのコンセプトは?
ソニア:ジェレミーはこの協業で、作家のゾラ・ニール・ハーストン(Zora Neale Hurston)や、歌手のエセル・ウォーターズ(Ethel Waters)、画家のジェイコブ・ローレンス(Jacob Lawrence)、写真家のタイラー・ミッチェル(Tyler Mitchell)、映画監督のジャニクザ・ブラボー(Janicza Bravo)、そして写真家カール・ヴァン・ヴェクテン(Carl Van Vechten)など、人々を喜ばせ、歴史を紡いできた黒人の作家やアーティストへのオマージュを捧げる“オリジナルの劇”を構想したんです。ジェレミーの未発表の脚本の一部をパーカやTシャツなどにプリントや刺繍であしらい、トートバッグにはセリフの全文をのせました。
WWD:性差を感じにくいデザインやシルエットのジェンダーニュートラルなアイテムが中心だが、エッセンスではあえてメンズ/ウィメンズウエアに区分している。
ソニア:エッセンスは、5万以上のアイテムと600以上のブランドを取り揃えており、ショッピング体験を可能な限り簡単に案内できるよう努力しています。ジェンダーアイデンティティ(性自認)に関する意識が高まっていますが、現時点では多くの一般消費者はアイテムを購入する際に、性別で選択するメンタルモデル(物事の見方や行動に大きく影響を与える固定観念)を持っています。
WWD:今回のコレクションも含めてECの売れ行きは?
ソニア:エッセンスは幸運にも順調に推移しています。世界中のチームが遠隔で仕事をする中で「エッセンス ワークス」を開発して立ち上げるのは、とても大きなチャレンジでした。コレクションも順調で、トラウザーやスカートなどのテーラードアイテムに強い関心が寄せられています。