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ぼくらがサステナビリティと呼ぶものの正体 エディターズレター(2020年11月30日配信分)

※この記事は2020年11月30日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

ぼくらがサステナビリティと呼ぶものの正体

 環境負荷を減らし、廃棄ゼロを目指し、循環型産業へ転換する。SDGsやESGなどファッション産業のサステナビリティを軸にした産業転換は、もはや待ったなしだ。リサイクル繊維やオーガニックコットンなどを使い、透明化することで環境や人権に配慮した産業活動を行い、いたずらに消費を煽らない。しかし、その一方で、こうした考え方や取り組みは新しいデザインや社会的な変化を促すものとは必ずしも両立しない。では、ファッション産業にとってのサステナビリティとは一体、何なのだろうか。どう向き合えば良いのか。

 この分野で2000年代から取り組んできたナイキやアディダス、リサイクル繊維素材メーカーで世界ナンバーワンのイタリアのアクアフィルのリーダーたちのインタビューや取り組みを注意深く見ていると、これまはさにデジタル化やインターネットによって変化した世界を見据えていることに気づく。

 例えば以前から繊維素材メーカーの間では、経済成長に伴い、糸=衣類の消費量が増えることは知られていた。デジタル化とインターネットは、一部の先進国にとどまっていた”消費”を同時多発的でかつ飛躍的な拡大を後押しする。だからこそ、リサイクルナイロン「エコニール」を展開するアクアフィル社のジュリオ・ボナッツィ会長や、石油を使わずタンパク質を原料に、劇的にエネルギー消費量の少ないプロセスで高性能な素材を生産する、人工タンパク質素材のスパイバーの関山和秀社長は、いずれも「素材革命が地球の平和とつながっている」と指摘する。衣料、あるいは繊維の使用量の増大は、単に環境問題というよりも食糧危機やエネルギー問題と裏側で直結しているのだ。

 ナイキで廃棄物を使ったスニーカーのコレクション”スペース ヒッピー”のデザイン担当のノア・マーフィー・ラインヘルツ(Noah Murphy-Reinhertz)氏は注目しているテクノロジーとして自社の「フライニット」テクノロジーを挙げている。このフライニットこそ、この30年で最大のテキスタイルのデジタルイノベーションの一つ、横編みニットの最新テクノロジーが活用されているものだ。

 デジタルとインターネットが劇的に世界のあり方を変える中で、サステナビリティは、新時代の通行手形のようなものだ。企業規模の大小にかかわらず、あるいは地域や思想、バックグラウンドにも関係なく、あらゆる企業と人は、この通行手形を持っていなければ、いわゆる”メインストリーム”には入れない。企業活動自体は可能ではある。しかし、これがなければ、企業ランキングに入る資格すら持てないのだ。

 新時代の”サステナビリティ”という通行手形を受け取るための規格や資格作りは始まったばかりだ。日本企業は、官民一体となってこの規格作りにまずは参画する必要がありそうだ。

TECH INSIGHTS:移りゆくファッション産業の今を、テクノロジーの視点から読み解きます。

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