ロックバンドシーンでファッションに定評のあるBIGMAMAのボーカリスト金井政人が、ストレイテナーのホリエアツシと日向秀和の先輩ミュージシャン2人を招いてファッション鼎談を行った。金井は「ジュン オカモト(JUN OKAMOTO)」とのコラボレーションでステージ衣装を制作するなど、“王子”とファンや関係者から親しまれるスタイルの持ち主。ストレイテナーのフロントマンであるホリエは「エンハーモニック タヴァーン(ENHARMONIC TAVERN)」のコレクション音楽を手がけ、ファッション・デザイナーらとの親交も深い。ベーシストの日向はステージやインスタグラムで見せる個性派ファッションが支持を得ている。ライブで全国を巡る機会も多い彼らのファッション事情とは?
楽しみはツアー中に見つけたお店巡り
日向秀和(以下、日向):バンドマンならではのファッションの楽しみ方は、全国ツアー中に見つけたお店巡りですね。セレクトショップに行くのが好きで、バイヤーさんが何を思って服を仕入れたのかを聞くのが楽しみなんです。ブランドのデザイナーさんかと思うくらいその服について詳しくて、愛のある方が多いじゃないですか。熱い話を聞かされると、グッときてつい購入してしまいます。昨年のツアーでは鹿児島のお店、ズール(ZOOL)が良かったな。そこで「ナナミカ(NANAMICA)」のジャケットを買いました。
ホリエアツシ(以下、ホリエ):僕はズールでオーロラシューズを買いました。西海岸色の濃いセレクトだったのですが、置いてあったものが良くて。広い敷地にアーティストの作品を飾るギャラリーや庭もある空間が素敵でした。カッコいいお店は地方に行くと目立っているんですよ。自分が知らなかったブランドの洋服を買うこともあります。店員さんもお客さんも熱量があるから、地方だと財布の紐が緩みます。
金井政人(以下、金井):僕も昨年のツアーで広島を訪れた時、ミライ(MIRAI)というセレクトショップに行きました。自分の好きな「ミハラヤスヒロ(MIHARAYASUHIRO)」を取り扱っているからのぞいてみたら良いお店でした。ストレイテナーの2人も常連だといま聞いて驚いています。服好きのバンドマン同士、つながりますね。
ファッションも自分で表現するのが一番
ホリエ:バンドマンのおしゃれ事情としては、僕らの先輩世代はおしゃれだったと思います。AIR JAM世代と呼ばれる2000年前後のパンクシーンの人たちは音楽とファッションがリンクしていたから、双方から人やファンが集まってきて勢いがあった。僕ら世代は言うなればオルタナ世代。お洒落をしたらかっこ悪い、みたいな空気感があったのは事実です。
日向:ラフなTシャツスタイルとか、グランジ風の古着ファッションとかが流行っていたよね。でも僕らストレイテナーは、そうじゃいけないと思って。初めて会った時からホリエくんとは趣味も合ったし、ファッションにも気を遣ってきたよね。そのマインドを持っている次の世代が金井くんのBIGMAMAかなと。
金井:音楽もそうだけど、ファッションも自分で表現するのが一番なんです。極端な話、趣味が合う人を探したいと思っている。そのために自分のファッションでステージに立っています。
日向:その気持ちは分かるな。僕が今日着ているオーバーオールは「アナクロノーム(ANACHRONORM)」という岡山のブランドで、デザイナーさんとも仲良くさせて頂いています。僕らがツアーで岡山に行くと、そのデザイナーさんがやっている「バランス」というショップに、ストレイテナーのファンの方々が集まってきてくれるんです。そうやって伝えていけるのはすごくうれしい。
ホリエ:それに僕らも音楽の作り手だから、ファッションの作り手の気持ちが分かるんです。ファッション・デザイナーの方と話していると共感できることが多い。そのこだわりが既存の何かへのカウンターであることが多いのも似ているなと思います。「エンハーモニック タヴァーン」には音楽で関わっているので、意見をさせてもらうこともあります。
金井:各地の音楽フェスに出ると気づくこともありますよね。ステージと楽屋で出演者の方々を見るじゃないですか。すると誰がファッションを着せられていて、誰が本当にファッションを好きなのかがわかってくる。普段着もカッコいい人を見ると、余計にその人のスタイルが好きになる。そうやってファッションでも、僕はストレイテナーの2人をリスペクトしています。