「WWDジャパン」2020年9月28号では「あの企業、あの人へラブレター」と題し、ファッションとビューティ業界の架け橋となる企画を実施。業界の垣根を超え、どんな人や企業と組みたいかを募り、その思いをつづった手紙を掲載した。その中で、黒石奈央子「アメリ ヴィンテージ(AMERI VINTAGE)」CEO兼クリエイティブディレクターがラブコールを送ったのが、野田義宗ジョンマスターオーガニックグループCBO兼代表取締役CEOだった。今回その思いが実り、コラボフレグランスの発売が実現。両者に商品のこだわりや完成までの経緯を聞いた。
WWD:改めて、黒石氏は弊紙ラブレター特集でなぜ野田氏へラブコールを?
黒石奈央子「アメリ ヴィンテージ」CEO兼クリエイティブディレクター(以下、黒石):実は、特集に声がかかる少し前に野田社長と知り合ったんです。サステナブルな商品を手掛けている共通点や企業理念、商品へのこだわりを伺う中で、一緒に何かモノづくりをしてみたいと思っていたところだったので、ラブコールを送りました。
WWD:ラブレターを受け取ってどう思った?
野田義宗ジョンマスターオーガニックグループCBO兼代表取締役CEO(以下、野田):ラブレターを受け取ったのが小学校4年生以来で、しかも紙面での公開ラブレターだったのでドキッとしました(笑)。もともと黒石さんのモノづくりや経営者としての姿勢に共感していたので、オファーをいただき即決しました。
WWD:コラボ商品を「ロールオンフレグランス」にした理由は?
野田:形状のスタイリッシュさが黒石さんと「アメリ ヴィンテージ」のブランドイメージに合っていたので、こちらから提案しました。
黒石:「ロールオンフレグランス」は普通のフレグランスと違ってあまり香りが強くないと聞いたんです。このギフトを贈られた人が、自分自身でほんのり香って心地よくなってもらいたいという気持ちもあり、自分へのご褒美にもなるアイテムだと思いました。
WWD:今回はバレンタインシーズンに向けた商品と聞いたが。
黒石:私が希望する香りを伝えたところ、「ジョンマスターオーガニック(JOHN MASTERS ORGANICS)」側から「ちょうど開発している香りがある」と聞き、それが甘すぎず爽やかな香りだったので、バレンタインにぴったりだなと。「アメリ ヴィンテージ」ではバレンタイン企画をあまりしたことがなく、新しいことに挑戦したい気持ちも後押ししました。
野田:コロナ禍でなかなか人に会えない分、ギフトを贈る人が増えていて、当社のギフト売り上げも前年比4倍です。ギフトを強化していたので、「ベストなタイミングでご一緒したい」と、すぐに話を進めました。「アメリ ヴィンテージ」はわれわれが開拓しきれていない顧客層を持っている。香りをライフスタイルの中にどう取り入れるか――それを「アメリ ヴィンテージ」と取り組む中で見つけることに価値があると感じました。
WWD:具体的にどのような香り?
野田:バニラとオレンジの柑橘系をメインにした、ビターで甘さのある香りです。黒石さんはスタイリッシュなルックスの中に柔らかさも持ち合わせた方。「アメリ ヴィンテージ」でもビンテージへのこだわりや、新旧を組み合わせたオリジナリティを開発している。だからオレンジのスイーツを思わせるほんのりビターでフルーティな甘さが最適だと思いました。
黒石:私は匂いフェチなので好き嫌いがハッキリ分かれるのですが(笑)、この香りはまとっていて心地がいいですね。リラックス効果があり、ナチュラルにつけられる“邪魔しない”香りです。
WWD:商品を作る上で苦労した点は?
黒石:パッケージの柄の選定に苦労しました。色々な柄で何度もシミュレーションした結果、21年春夏の推し柄“ルイーズ”を採用しました。弊社のデザイナーがニューヨークの美術館で着想を得て手描きでペイントした、オリジナルの柄です。男女どちらが贈られてもうれしいユニセックスなデザインで、バレンタインに合わせてチョコレートのパッケージも意識しています。
野田:バニラの果実から取れる非常に希少な成分、バニラ果実エキスにこだわったので、成分の確保は難しかったです。
WWD:両社のサステナブルな理念が縁となりコラボレーションが実現したが、2人が考えるサステナビリティとは?
野田:サステナブルは挑戦でなく、試行錯誤であり、何より愛です。サステナビリティを実行するには工夫が要ります。それでも取り組むのは、自分、地球環境、子供たちの未来のため。「人を美しくするだけでなく、地球環境を壊さない」ことがわれわれのブランドテーマですが、今年は「地球に敬意を払う」「One Earth」というメッセージをより強く打ち出していきます。弊社の製品を使うことで消費者が自分を愛しむようになり、さらにオーガニックやサステナビリティに関心を持つきっかけになるようなブランドでありたい。それがオーガニックコスメとして提供できる付加価値ですから。
黒石:サステナビリティと聞くと社会貢献のイメージがありますが、そもそも人間が壊したものを人間がなおすのは当たり前のこと。最近では、サステナビリティがややトレンドとして扱われている感じもありますが、それでもいいと私は思っています。偽善でもいい。きっかけやどういう思いでやっているかが重要なのではなく、結果として地球環境や社会全体が良くなればそれでいい。ただ、もう少し簡単にできる世の中になるといいですね。サステナビリティに取り組もうと思っても、どうすればいいのか分からない人も多い。簡単なシステムさえ構築されれば、もっと良くなるのではないでしょうか。
WWD:コラボレーションのメリットをどう考える?
黒石:お互いの顧客層が違うので、新規顧客の獲得につながることですね。コスメブランドとの初めてのコラボレーションが実現して嬉しいです。
野田:「アメリ ヴィンテージ」の思いと「ジョンマスターオーガニック」のこだわりがシンクロし、新しい価値の提供がこのような取り組みによって実現できることが重要だと思います。ラブレター企画がきっかけですが、さらにブラッシュアップしながら継続してやっていきたいです。