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大統領選挙と炎上事件を目の当たりにして エディターズレター(2020年11月9日配信分)

※この記事は2020年11月9日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editor's Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

大統領選挙と炎上事件を目の当たりにして

 予断を許さない状況が続いていますが、アメリカ大統領選挙についてはチョットだけ自分の心は落ち着きました。11月3日の数日前から、報道番組に現れるトランプ大統領の演説に付される字幕が「(例えば『悪の枢軸』とか『卑劣な極悪集団』など)もはやニュースじゃなくて、映画のソレだな」とソワソワしていましたが、直前になって「猛追」のニュースが増えると更にソワソワ。4日はスマホに釘付けで、彼がフロリダで勝ったことを知った時、そのソワソワは頂点に達しました。

 つくづく、「アメリカは広いんだなぁ」と感じました。だって私、ニューヨークで3年半ほど暮らし、その後も出張を繰り返していますが、訪れる街はニューヨークやロサンゼルス、サンフランシスコばかりなせいか、正直、共和党支持を公言する人に出会ったことがないんです。民主党を支持する人が多いとされるファッション&ビューティ業界に身を置いている影響もあるのでしょうが、民主党支持、もしくは反トランプ大統領の人には大勢お会いしたことがあるのに、です。あらためて「私が知っているアメリカは、実際の半分にも満たないのかもしれない」と痛感しました。

 そうなるとリンク1本目の記事のように、アメリカの店舗は厳戒態勢を敷かずにはいられませんね。だってどれだけ想像しても、それは「私の知っている世界」、つまり「実際の半分」かもしれないんです。ニュースに対して、もう半分がどう思い、何をするかは想像しきれない。その反応により、「私の知っている半分の世界」の人さえ行動を変えるのかもしれない。そう考えると、ショーウインドーを木製パネルで覆いたくなる気持ちも分かります。

 「私の知らない半分の世界」を少しでも知るためには、どうしたら良いのでしょうか?月並みですが、「学ぶ」しかないのでしょうね。学び、考え、話し合う。そのループを繰り返すしかないのでしょう。こんな時、記者という仕事をしていて本当に良かったなぁと思います。私の仕事は、究極「学ぶこと」です。知らないことを「知りたい」と思い、名刺一枚で誰にでも会える特権を生かして、学んで、それを発信する。すると、コンテンツに対するリアクションでまた学び、考え、今は誰とも案外簡単に話し合うことだってできる。それを、お給料をもらいながら続けられるのだから、本当にありがたい仕事です。この仕事を繰り返して想像力を育み、そんな自分の経験をコンテンツという形で還元することで、みんなの想像力が豊かになればと願います。

 業界では最近、アツギのキャンペーンが大炎上して中止に追い込まれ、同社は謝罪。現在ツイッターは休止中です。男性目線(と言うのは乱暴ですが)的な表現が、「世界のもう半分」の女性(これも、また乱暴な表現です)を中心とする人々の怒りを買いました。正直、「想像力が足りなかった」という印象です。「キャンペーンを見た女性がどう思うか?」、つまり「キャンペーンを見た、自分とは違うもう半分の世界にいるかもしれない人がどう思うか?」という想像力です。こうした力を育むには、やっぱり学び、考え、話し合うしかない気がします。

 学び、考え、話し合うことを生業にしている私たちは、何かできるのではないか?大統領選挙と炎上を目の当たりにして、そんなことを考えました。

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