今年発売35周年を迎えるキリンビバレッジの「午後の紅茶」は、フラッグシップ商品である「ストレートティー、ミルクティー、レモンティー」をリニューアルし、3月9日に全国発売する。飲料市場における紅茶カテゴリーの売上シェア50%※1を占め、全清涼飲料において好意度第2位※2を誇るブランドは、35年でどのような商品開発やコミュニケーション戦略を行ってきたのか。「午後ティー」の愛称で親しまれる国民的紅茶ブランドのリニューアルから、ロングセラーであり続ける秘訣を探る。
「幸せなときめきを届ける」
味わいとパッケージ
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「午後の紅茶」は、1986年に日本初※3のペットボトル入り紅茶として誕生した、市場のパイオニアだ。多くのロングセラー商品がそうであるように、消費者の嗜好に合わせてマイナーチェンジされる味わいや発信されるキャッチコピーは、時代の合わせ鏡として「売れ続ける商品」作りのヒントが隠されている。
35年目のリニューアルでは、「いつでもお客様に幸せなときめきを届ける」というブランド・パーパス(社会的存在意義)を軸に、健康意識の高まりや、紅茶を飲むと“少し気持ちが上がる”ベネフィット(商品から得られる良い効果)に応えた施策を、商品とキャンペーンの双方から訴求する。
まず味覚では、茶葉のブレンドを見直した。フレーバーごとに相性の良いスリランカ産の品種を使用して、「すっきり感」と「茶葉の香り」を高めることで「午後ティー史上最高おいしい!」を実現したという。パッケージでは、背景をダイヤ柄に変更して、ティーポットのイラストを大きく配置。おいしさと上品な可愛いらしさを同時に連想させるデザインにすることで、正統派で上質なイメージを強めた。
絶え間ない商品開発の努力で
ペットボトル紅茶を日本の“文化”に
今でこそ、日本において「午後の紅茶」を知らない人は極わずかだろうが、商品が誕生した1986年は紅茶といえば本場・英国と同じく、家庭で淹れるホットティーが主流だった。「それから35年の間に、私たちの『午後の紅茶』が、ペットボトルで紅茶を飲むという今では当たり前の習慣を作ってきたという自負がある」と加藤麻里子シニアブランドマネジャー。ただ当時の商品開発に当たっては超えるべきハードルも数々あった。その一つが、「紅茶は冷やすと濁る」という性質で、当時は“おいしそうな透明感”をアイスティーで出すのは困難だった。この課題を解決したのが、キリンビバレッジの独自技術「クリアアイスティー製法」で、日本初のペットボトル入り紅茶の商品化を可能にした。
発売から徐々に売上を伸ばしていった「午後の紅茶」は、1996年の小型ペットボトルの発売をターニングポイントに、紅茶を日常的に飲む習慣をさらに普及させていく。無糖茶市場が盛り上がる2006年には、“紅茶=甘い・高いカロリー”の固定概念を払拭するために、「20年目の新提案。実はヘルシー」のキャッチコピーで、「午後の紅茶」から遠のいていたユーザーの再トライアル化に成功。10年に発売した「エスプレッソティー」は男性の缶コーヒーユーザーを捉え、11年に登場した「おいしい無糖」は「おにぎり公式飲料!?」という意外性のあるキャッチコピーと新たな飲用シーンの提案で、無糖紅茶の市場定着に貢献した。19年に発売した、甘くない・微糖の“午後の紅茶 ザ・マイスターズ ミルクティー”は大人層の気分転換のシーンにマッチして、大ヒット商品へとつながっている。
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時代に合わせて、さまざまなフレーバーや企画商品を柔軟に打ち出す「午後の紅茶」だが、「ストレートティー、ミルクティー、レモンティー」は「ブランドイメージを形成するフラッグシップ商品。嗜好品としてのおいしさを追求している」と話す。リニューアルの商品開発では、通常の10倍となる約3000人の意見を参考にした。常温テストも行い、飲み切るまでの味わいにも徹底的にこだわった。「『午後の紅茶』を飲む人だけでなく、飲まない人にも『おいしい』と言っていただける商品を作るのに苦労した」と振り返る。
徹底した市場調査から導き出される「午後の紅茶」流のマーケティングだが、過去のリニューアルでは苦戦もある。商品パッケージからブランドのアイコン、アンナ・マリア婦人の似顔絵を消したときに「約3年間、売り上げが低迷した。ブランドは無形資産と言われるように、「午後の紅茶」の明朝体のフォントだけでなく、婦人とセットで見ると直感的に『午後の紅茶』だと認識されていたことが分かり、何かが無くなったり加わったりするだけで、ブランド価値が揺らぐことに気付かされた」と話す。
「午後の紅茶」は、今後さらに半世紀愛されるブランドを目指して「まずは今年1年、お客さまに支えられた感謝をさまざまなかたちで伝えていく」。リニューアル商品発売の3月以降も、やさしさ・おいしさ・ときめきをコンセプトにしたキャンペーンを続々と予定している。ビジネス面では「清涼飲料全体で紅茶市場のシェアは約5%※4と低く、まだ伸びしろがある。NO.1ブランド※5として、さらに多くの人に紅茶を飲んでいただけるきっかけを作っていきたい」と展望を語る。
茶葉から広がるCSV活動
「午後の紅茶」は、商品と親和性のある地域や国でCSV活動を続けてきたが、今年はその取り組みを強化して、社外にも発信していく。日本に輸入される紅茶葉の46%※6占め、「午後の紅茶」にも使用するスリランカ紅茶葉の産地支援プロジェクト「キリン スリランカフレンドシップ」 の一環では、07年に農園の子どもたちが通う学校へ図書を寄贈する「キリンライブラリー」をスタート。13年からは、農園従事者の生活と労働環境の向上を目指して「レインフォレスト・アライアンス認証」取得の支援プログラムも続けている。茶葉をフックにした社会貢献からも、「午後の紅茶」のおいしさを伝えることを推進していく。
※2 2020年3月 キリンビバレッジ調べ
※3 株式会社食品マーケティング研究所調べ(1986年当時の主要飲料販売メーカー及び製罐メーカーを対象としたヒアリング調査による)
※5 株式会社食品マーケティング研究所調べ(2020年実績)
※6 財務省「貿易統計」
キリンビバレッジお客様相談室
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