ファッション

話題の「goodnight5tore」、仕掛け人が全てを語る

 いま、ファッション好きな若者たちの間で話題になっている「goodnight5tore(グッドナイトストア)」というブランドをご存知だろうか。公式のインスタグラムアカウト(@goodnight5tore、フォロワー数:3.5万人)と公式サイト(通販サイト)のabout欄にはdreamy artsと一言書いてあるだけ。アイテムはTシャツ(1万1000円)、ロンT(1万4300円)、パーカ(2万4500円)とベーシックなカジュアルウェアのみの展開で、値段もそれなりだ(というか結構高い)が、こちらはブランドの説明以上に、商品説明は全くない。しかも商品は現在、全て売り切れている。

 公式サイトの【特定商取引法に基づく表記】には、事業運営者としてKenji Tsukaharaという名前が出ている。D2Cブランドに詳しい人ならピンとくるかもしれない。インスタのフォロワー数55.7万人を抱える「イチナナキログラム(17kg)」などいくつかのD2Cブランドを運営するイチナナキログラムの社長として知られる塚原健司だ。「グッドナイトストア」の全てを塚原本人が話した。

WWDジャパン(WWD):不思議なブランドですね。

塚原健司(以下、塚原):そういった意図は特にありません。僕にとっては実験的なプロジェクトではありますが。「グッドナイトストア」の製品は実は19年ごろから遊びで作っていて、たまに商品をアップしては3〜4カ月に一回くらい再販していました。20年春から本腰を入れて月1回のペースで販売していましたが、毎回数分で即完してしまい、新製品を出したり、過去の製品を再販したりしていました。最近になって高額転売が起きていたので、1月分(1月23日販売)は抽選販売にしたのですが、600万円分の在庫に対して、7000人から1億3000万円分の申し込みがありました。

WWD:そもそも、なぜこのブランドを?

塚原:自分の好きな世界観で自分の好きな服を売ろう、というのが「グッドナイトストア」の出発点です。細かく採寸を繰り返したり、素材を探したり、1年近くをかけて製品を作り込みました。なので製品の価格も、原価があって、そこに経費などを載せていって決めています。

WWD:原価率は?

塚原:あえて言う必要性を感じないので言いませんが、普通です。原価率は高くもなければ低くもないと思います。これまで、「17kg」を筆頭にこれまでは綿密なリサーチを重ねてターゲット層を設定し、商品も常にニーズを徹底的に分析して売れ筋を販売してきました。だから「グッドナイトストア」」のアプローチは真逆のやり方です。

WWD:商品やブランドの説明を徹底的に省いている。その理由は?

塚原:ブランドを本格的にやろうと決めた時点でグローバル展開を考えていたので、できる限り日本語、というより言語を使わないやり方をかなり研究しました。公式サイトやインスタの公式アカウントではほぼ言葉は使わず、空気感や世界観を伝えるビジュアルを投稿しています。特にロゴに関しては「ひと目見て印象に残るか」という点でかなり考え抜きました。

WWD:インスタ公式アカウントのインサイトは?

塚原:男女比は半々くらい、年代だと20代が一番多いですね。海外の割合は2割ですが、今もどんどん伸びています。台湾や中国、韓国が多いです。これはかなり嬉しいです。

WWD:ユニセックスというのは意識した?

塚原:そもそもアイテムがベーシックなカジュアルウエアなので、ユニセックスかどうかというのは見せ方だけの問題ですよね。その部分は変にこちらが決めつけるようなことはしないようには気をつけました。

WWD:運営体制は?

塚原:ブランドの運営に関わっているのは僕とあともう一人だけです。商品企画や撮影、インスタの運用、グラフィック制作などは自分でやっています。ロゴも自分で作りました。ビジュアルにはこだわっていますが、できるだけコストを掛けないようにしています。広告はほぼというか、全くしていません。基本はギフティングです。商品の販売数が少ないのもあえて絞っているわけではなく、単に工場のキャパも人手も資金も限られていて、単に作れないからです。

WWD:ギフティングのやり方は?

塚原:業界未経験でほぼゼロから立ち上げた「17kg」のときもそうでしたが、基本的には着てほしい人を見つけて、DMを送ってお願いする、というやり方です。今回は特に個人的に思い入れの強いプロジェクトなので、純粋に着てほしいと思ったインフルエンサーにDMして、連絡先を聞いて商品を送っただけ。いつもは「もしよかったらSNSに上げてください」くらいの一言は入れるのですが、今回はそれも入れませんでした。かっこいいと思ったら着てもらえるだろうし、自慢したいと思ったらインスタにもアップするので。でもどのインフルエンサーにも、ブランドロゴや商品のディテールへのこだわりは伝わって共感していて、こちらが何も言わなくても、ある種思った通りの写真を上げてくれて、それがどんどん増殖して波及していきました。

WWD:「17kg」で培ったインフルエンサーとのつながりも役に立った?

塚原:逆に、そういったインフルエンサーの方々にはお願いできないです。「17kg」も好きで着てくれていて、それがきっかけになってタイアップに発展していますが、「新ブランド立ち上げるのでお願いします」みたいなことをしたら、信頼を損なうし、そーゆう“やらせ”はファンからの信頼を一瞬で失うことにもなる。「グッドナイトストア」もほぼゼロからここまでファンを増やせたことが、エンゲージメントの高さにつながっていると思います。

WWD:今後は?

塚原:グローバルに展開していきたいと思っているので、ビッグネームのブランドとコラボレーションをしたいと思っていますし、いずれは東コレやパリコレにも出たい。「グッドナイトストア」を通して、自分が好きなものを夢中で作って広げられた、ということは知ってほしい。やり方次第では、一人でも自分の好きなものを貫いてここまでできる。そのためにも、世界規模で広げたい。本気でそう思っています。

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

2025年春夏ウィメンズリアルトレンド特集 もっと軽やかに、華やかに【WWDJAPAN BEAUTY付録:2024年下半期ベストコスメ発表】

百貨店、ファッションビルブランド、セレクトショップの2025年春夏の打ち出しが出そろった。ここ数年はベーシック回帰の流れが強かった国内リアルクローズ市場は、海外ランウエイを席巻した「ボーホー×ロマンチック」なムードに呼応し、今季は一気に華やかさを取り戻しそうな気配です。ただ、例年ますます厳しさを増す夏の暑さの中で、商品企画やMDの見直しも急務となっています。

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。