自身の名を冠したブランドを持つデザイナーのジェイソン・ウー(Jason Wu)は14日、ニューヨーク・ファッション・ウイークでスーパーマーケットの店内をコンセプトにした空間で2021-22年秋冬コレクションを発表した。ニューヨークはブロードウェイ地区に位置する空き店舗を、1950年代のファーマーズマーケットをテーマにした「ミスター・ウーズ・ジェネラル・ストア(Mr. Wu’s General Store)」に転換した。
当日は果物や野菜といった生鮮食品をはじめとする食材や、ワインが積まれた店内で発表した。使用した食品は全て料理店向け専門食品の販売代理店の「シェフズ・ウエアハウス(CHEF’S WAREHOUSE)」から取り寄せた。そして発表後に食事提供を行う非営利団体の「シティー・ハーベスト(City Harvest)」を通して、5自治区に及ぶ200世帯に寄付した。
コレクション発表の際にウーは、デザイナーとしての自分だけでなく一人の人間として表現をしたいと考えていたという。コロナ下では料理を通して創造性を高め、癒しを得ていた。コネティカット州に住む母親からのレシピを含む料理を多数作り、料理用インスタグラムアカウント(@mrwueats)を通して発信している。そして、ショーでは料理への愛が伝わる演出を試みた。ほぼ全てのニューヨーク・ファッション・ウイーク参加ブランドがオンラインでの発表を決める中、あえてリアルなショー開催を選んだ。
「私が最も熱を注いでいる料理とファッションを組み合わせたのは、今回が初めて。自然な感じで、買い物に来たかのように表現できてうれしい。私たちは今、目まぐるしいコレクションサイクルで、いっぱいいっぱいだ。そんな中でデザイナーとしての私個人の経験や、何に安心感を覚えるかなどについて考えさせられた。デザイナーはファッションだけでなく、人としてどのように感じているかを服に落とし込む必要がある。皆、今はこのようなお店に来たいんじゃないかな」とコメントした。
コレクションでは、アメリカンカジュアルの要素とクラフツマンシップを取り入れた。全体的にミニマリストなデザインに仕上げ、ロング丈のスカートとマッチする温かみのあるニットや、プリントのワンピース、フリンジ付きのトレンチコートなどを通してエレガントなミニマリズムを表現。ウー自身もコレクション後に着用したコカ・コーラのロゴを使用したパーカやワンピースも発表し、遊び心のあるポップな雰囲気も取り入れた。
また、市場で買い物をしたり家で時間を過ごしたりする女性の日常も描いている。「私のデザインにバリエーションを感じ取って欲しいという思いもある。多くの人が私からレッドカーペットを連想するだろう。前シーズンのバケーションを想起させるものからぬくぬくしたくなるようなセーターまで、なんでもできるデザイナーとして見て欲しい」と語った。