いま勢いのあるメンズヘアサロンの一つ「ゴールド(GOALD)」の渋谷店で、佐藤拓弥・店長は同サロンの飛躍を支えている。得意のメンズパーマスタイルをインスタグラムで発信し、現在フォロワー数は1万8000を超える。佐藤店長がゴールドに参画した経緯や、約8割の来店を促しているというインスタグラムの発信方法を聞いた。
WWD:「ゴールド」に参画した経緯は?
佐藤:都内1店舗を経て「ゴールド」に入社しました。前サロンは歴史があって会社の規模も大きくさまざまな経験を積ませてもらいましたが、自分の力で一から作り上げていくことも楽しそうだなと思い、「ゴールド」に入社しました。当時からメンズパーマを提案していたので、それに特化したメンズサロンをやりたかったというのも理由の一つです。まずは副店長を務め、昨年の9月、店長になりました。
WWD:店長として託されたミッションは?
佐藤:自分は今年30歳になりますが、代表の中村の次に美容師歴が長いのが僕。スタッフは若手がそろっているので、美容師として一番大切な技術力や接客において、僕のやり方を一つの正解として見てもらうことです。
WWD:男性はカットが中心になりがちだが、パーマも提案している。
佐藤:サロンワークの中で、強くかかりすぎたり、反対にゆるすぎて扱いずらかったり、カラーよりもパーマの方がイメージとかい離するから「もうやらない」と決めてしまう人が多いことに気づきました。特に地方から来店してくれたお客さまにはパーマで失敗した経験がある人が多くて。そういう人を減らしたいなと思って、まずは自分のお客さまのパーマに対するマイナスイメージをなくす、「むしろ思っていたよりもいいじゃん」って思ってほしいと考えました。
WWD:中村代表は「ゴールド」を立ち上げた19年、カラーやパーマなど、ワンランク上の上質なものを提供したいと言っていた。アイロンやコテを使ってスタイリングで仕上げる美容師も多い。
佐藤:パーマが得意だから入れたのかも(笑)。現在はヘアスタイルの写真や動画がSNSなどでいっぱい見れるので、その通りのヘアスタイルにしたいと来店してくれるお客さまがたくさんいます。そんなときにスタイリングでの仕上げは、来店したその日はかっこよくなれますが、次の日以降はお客さまご自身でスタイリングするから同じスタイルに仕上げることが難しくなってしまう。パーマの良いところはリアリティがあって、再現性があるところ。10代はアイロンで雰囲気を楽しむのもありですが、20、30代にはスタイリングを簡単にすませたいというニーズもある。がんばりすぎなくても毎日をかっこよく過ごせるというのは、今のムードにもあっているんだと思います。
男性に響きやすいSNSとは
美容師としての活用術
WWD:現在インスタグラムのフォロワー数は1万8000人。昨年かなり増えたが、その背景は?
佐藤:何が受けるのか色々と試していた中、昨年の4月ごろの自粛期間中に投稿したヘアスタイルの動画がとてもヒットしました。それ以来、動画を使ったスタイル紹介を継続しています。コロナ下で作品撮りもしにくいですし、毎日投稿が続けられるように、お客さまを撮影するようになりました。お客さまを動画で撮影しているのでリアルなヘアスタイルが届けられているとも思います。今では8割ほどがSNSを見て来店してくれています。
WWD:動画にスタイルの説明が文字で載せてあるのもオーダーするときにわかりやすい。
佐藤:ハッシュタグ検索より、ぱっと見てわかりやすいようにしたいと思っています。自分の投稿の中でも似ているスタイルが多いので、オーダーされたときに、僕自身が思い出すための工夫でもあります。発信することも大事ですが、それで終わりではありません。自分で把握することも大切です。
WWD:男性に響く発信のポイントは。
佐藤:フォントはポップにしすぎず毎回同じものを使用して、文字は白で色は使わないこと。ぱっと見て洗練されていて統一感があるように意識しています。男性は面倒くさがりなところがあるので、わかりやすさは必要です。美容師として人柄がわからないと単なる仕事アカウントになってしまうので、自分のファッションやライフスタイルも投稿しています。
WWD:続けるためのコツは。
佐藤:フィードの列ごとにヘアスタイルやファッションなどカテゴリーを分けている人もいるますが、なるべく続けられるように細かい決めごとは作ってはいません。本職は美容師なので、あくまで空いた時間にささっと、毎日続けられることを重視しています。1つの投稿にかける時間も5分ほどです。
WWD:店長としてスタッフにも活用術をシェアしている?
佐藤:それぞれの人間性や、やりたいスタイルがあるので、単純にフォロワー数が多い人の真似すればいいというものではありません。最近はバズらせようという風潮が強いですが、自分のスタイルを見つけ出すには時間がかかるものです。自分はこれができるようになったから、どうやって発信しようかという順番が理想的ですよね。発信のノウハウを教えるよりも、まずは美容師としての技術力が一番。一人ひとりと向き合ってそれぞれのスタイルを見つけるようにしています。接客や技術、サロンワークで細かいことにこだわれる人は、SNSにもこだわることができます。発信するための動機はなんでも良いと思いますが、得意分野や他の人と違って何ができるのかスキルを整理するよい機会です。