ロレアル(L’OREAL)の2020年12月期決算は売上高が前期比6.3%減の279億9210万ユーロ(約3兆5270億円)、営業利益が同6.2%減の52億900万ユーロ(約6563億円)、純利益が同5%減の35億6760万ユーロ(約4495億円)だった。新型コロナウイルスの影響を大きく受け、約7年ぶりの減収となった。
事業部別で見ると、「ラ ロッシュ ポゼ(LA ROCHE POSAY)」「セラヴィ(CERAVE)」「ヴィシー(VICHY)」などのプロフェッショナルスキンケアブランドを擁するアクティブコスメティクス事業部の売上高は同13%増の30億1100万ユーロ(約3793億円)と唯一成長する事業となった。また、2年連続で過去最高の成長率を達成した。同事業部は皮膚科医などの皮膚のプロフェッショナルが支持するブランドから成り、健康意識の向上や肌トラブルの増加などニューノーマルのニーズとマッチし、急成長した。中でも「セラヴィ」は北米で人気上昇中で、売り上げは倍増した。
「ケラスターゼ(KERASTASE)」や「ロレアル プロフェッショナル(L’OREAL PROFESSIONNEL)」などサロン向けヘア商材を展開するプロフェッショナルプロダクツ事業部はサロンの休業が業績に響き売り上げは同10%減の30億9730万ユーロ(約3902億円)だったが、ヘアケアが好調で「ケラスターゼ」は2ケタ成長を遂げた。同じくコンシューマープロダクツ事業部でもヘアケアが好調で、「ロレアル パリ(L’OREAL PARIS)」の“エルセーヴ ドリーム ロング”シリーズがけん引。メイクアップはマスク着用や外出自粛で苦戦し、その結果同事業部の売り上げは同8.2%減の117億380万ユーロ(約1兆4700億円)だった。ロレアル リュクス事業部は同7.6%減の101億7990万ユーロ(約1兆2800億円)で、渡航制限によるトラベルリテールの不調が影響した。厳しい状況の中でスキンケアが健闘し、「ランコム(LANCOME)」「ヘレナ ルビンスタイン(HELENA RUBINSTEIN)」「キールズ (KIEHL’S)」などスキンケアが強いブランドが持ちこたえた。
地域別ではアジアパシフィックが唯一売り上げを伸ばした。特に中国本土の売り上げが同24.1%増で、全事業部において2ケタ成長を記録するなど引き続き成長をけん引した。11月11日の「独身の日」セールでは「ランコム」と「ロレアル パリ」がTモールの美容カテゴリー売り上げの1位に輝いた。
また、EC売り上げは同62%増(現地通貨ベース)を記録し、全体の売り上げの26.6%と過去最高値となった。
アライアンス・バーンスタイン(AB BERNSTEIN)のアナリスト、ブルーノ・モンテイン(Bruno Monteyne)は「ここ数年のロレアルは市場平均を上回るパフォーマンスを成し遂げている。2021年も引き続きマーケットをリードするだろう」とコメント。JPモルガン・カザノブ(J.P. MORGAN CAZENOVE)のアナリスト、セリーヌ・パヌッティ(Celine Pannuti)は「ヨーロッパ中に広がるロックダウンにも関わらずこのパフォーマンスを達成できたのは、ロレアルのデジタル戦略の奏功を物語っている。ジャン・ポール・アゴン(Jean-Paul Agon)会長兼最高経営責任者(CEO)は5月に、安心してCEOのポジションをニコラス・イエロニムス(Nicolas Hieronimus)に引き継ぐことができるだろう」と語った。