2月14〜18日に開催された2021-22年秋冬ニューヨーク・ファッション・ウイーク(以下、NYコレ)は、75年以上の歴史の中で最も分断されたものだったと言えるだろう。というのも、デジタルが中心になり、発表するコレクションのシーズンも、フォーマットや日程もバラバラで足並みがそろわなくなっているからだ。さらに開催に先立って、アメリカファッション協議会(COUNCIL OF FASHION DESIGNERS OF AMERICA 以下、CFDA)は、時期や場所を問わずアメリカを拠点に活動するデザイナーたちが独自のデジタル・プラットフォーム「ランウエイ360(RUNWAY 360)」でコレクションを発表できるようにするため、公式カレンダーを「アメリカン・コレクションズ・カレンダー」に改称。一方、NYコレを主催するIMGは5日間の公式スケジュールを維持すると共にCFDAとは別のデジタル・プラットフォーム(NYFW.com)を用意し、消費者を念頭に置いたバーチャル・パネルディスカッションや限定アイテムのリリースなども企画するなど異なる動きを見せている。
結果として、NYコレ期間中に双方のプラットフォームを活用するブランドもあるものの、期間の前後や遅ければ4〜5月といったように独自のスケジュールで発表するブランドも増加。実際、マイケル・コース(Michael Kors)はブランド設立40周年を記念した21-22年秋冬コレクションを4月20日にブランドのさまざまなデジタルチャネルで披露予定。「オスカー デラ レンタ(OSCAR DE LA RENTA)」や「キャロリーナ へレラ(CAROLINA HERRERA)」「コーチ1941(COACH 1941)」などの常連ブランドも期間外の発表を決めた。そして、中には発表すらしないブランドもある。
その背景にあるのは、企業がスポンサーとなるファッション・ウイークを取り仕切る2つの団体の間で長引く対立や競争だ。それを嘆き、結果としてアメリカのファッション界にできる限りの貢献ができていないのではないかという声もある。NYコレ開幕2日前に「ランウエイ360」でコレクションを披露したウラ・ジョンソン(Ulla Johnson)は「今の分断された状況は悲しい。他の国では、政府がファッション・ウイークを維持し、業界が一致団結して語ることに配慮している。NYではそれが失われてしまったが、取り戻せることを願っている」と話す。また、現在CFDAの会長を務めるトム・フォード(Tom Ford)が前任のダイアン・フォン・ファステンバーグ(Diane von Furstenberg)のように“応援団長”として目立つ存在になっていないことを失望するデザイナーもいる。ただ、フォードが新型コロナウイルスの影響で困難な状況に陥ったデザイナーのためにアナ・ウィンター(Anna Wintour)率いる「ヴォーグ(VOGUE)」と共に助成金プログラム「ア コモン スレッド(A Common Thread)」を立ち上げたり、BLM(Black Lives Matter=黒人の命は大切)運動への対応を主導して業界をより包括的で公平なものへと変革する取り組みを発表したりと、CFDAの会員やコミュニティーのために尽力しているのも事実ではある。
NYデザイナーたちの本音
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