ラグジュアリーブランドによる意外性のある“コラボ”商品が売れている。1月に発売された「グッチ(GUCCI)」×「ドラえもん」、「ロエベ(LOEWE)」×「となりのトトロ」の売れ行きは、有力百貨店の特選(ラグジュアリーブランド)バイヤーによれば、どちらも非常に好調だったという。コロナ禍以降、特選売り上げは海外旅行や外食を制限されている国内富裕層の消費を取り込んでおり、落ち込みの激しい百貨店の他カテゴリー(婦人服や化粧品など)に比べて堅調だ。ただし、1月は緊急事態宣言の再発令で客足が鈍り、特選フロアもさすがの苦戦ムード。そんな中で救世主となったのがコラボ商品だ。
「若い世代の、トレンドに敏感なお客さまにとてもよく売れた。『グッチ』のファンだけでなく、『ドラえもん』好きの方にもカードケースなどのエントリー商品が好評だった」と「グッチ」×「ドラえもん」について話すのは、伊勢丹新宿本店の高木隆人 婦人インターナショナルラグジュアリーマーチャンダイザー。同コラボの商品は阪急うめだ本店でも、「20代前半〜30代前半を中心に新規客を取り込むことができ、記録的な売り上げとなった。カードケースなどのスモールレザーグッズやTシャツ、パーカはほぼ完売した」(花谷典男ラグジュアリー商品統括部ゼネラルマーチャンダイザー)という。
「グッチ」×「ドラえもん」については他百貨店からも、「想定していた以上の売れ行き」(高島屋の磯部直希 婦人服・特選・宝飾品部マーチャンダイザー)、「20~30代の新世代の外商顧客からの問い合わせも多かった」(そごう・西武の佐藤徹リーシング本部リーシング1部ラグジュアリー担当)といった声があがっている。発表された際は、そのあまりにも意外な組み合わせに驚きの声もあがっていたが、各百貨店で大成功となったようだ。
「ロエベ」×「トトロ」も20~30代客の取り込みに成功
「ロエベ」×「となりのトトロ」に関しては、1月8日から1階で同コラボの催事を行った松屋銀座本店いわく、「催事初日が緊急事態宣言の開始日と重なったが、オープン前には20〜30代のお客さまの行列ができた(注:密をできる限り避けて販売)。“マックロクロスケ”のミニ財布やカードケースなどが特によく売れた」(大野裕次郎 営業2部婦人2課長)。伊勢丹新宿本店、西武池袋本店、高島屋などからも同様の声があがっている。
「ドラえもん」や「となりのトトロ」コラボに比べると組み合わせの意外性はやや薄れるが、1月6日に発売された「グッチ」×「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」のコラボも非常に好調だったようだ。同コラボは、国内では東京・渋谷のミヤシタパークのブランド直営店と、大丸心斎橋店のみで販売。大丸心斎橋店は、「具体的な金額は公表できないが、非常に好調だった」(玉眞寛貴MD戦略第1統括部マネジャー 特選・海外プレタ担当)という。大丸松坂屋百貨店(10店累計)の1月の特選売り上げは同8%減。前年1月はコロナ禍が本格化する前に春節休暇で来日していた中国人客による売り上げもあったため、それに比べると苦しい着地となったが、「グッチ」×「ザ・ノース・フェイス」の押し上げ効果で、国内客に限った特選売り上げは同15%増だったという。
ラグジュアリーブランドによるカテゴリーを越境するようなコラボは、2017年の「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」×「シュプリーム(SUPREME)」の成功以降、さまざまなものが生まれている。こうしたコラボは発売後すぐにリセール市場で高値で取り引きされる点などが批判もされているが、百貨店やブランド側にとっては、単なる売り上げの“カンフル剤”以上の価値があるようだ。「今の時代の消費は、世の中全員の興味をひくような大きなサークル(興味対象)があるのではなく、小さなサークルがいくつもある状態。百貨店も大きなサークルを狙うのではなく、1人1人の小さなサークルにいかに訴えるかを考えなければならない。コラボはまさに、そういった小さなサークル同士をつなげ、価値を高めていく手法」と話すのは、松屋銀座本店の小川喜弘 営業2部長。単に商品を店頭やECにそろえて売るのではなく、コラボのように「人やモノ、コトをつなげていくことが、これからの時代の百貨店には求められていると思う」と続ける。
「WWDジャパン」では、2月22日号で「2020年秋冬に売れたものは何だった?」と題した特集を掲載。連動して、全国41の百貨店に化粧品、特選、ジュエリー、時計、婦人服、紳士服、バッグ、シューズ、ファッションジュエリーの9カテゴリーの商況をアンケート調査した別冊の「20年秋冬ビジネスリポート」も発行した。「ビジネスリポート」は定期購読者向けの特典という位置づけだが、個別で販売もしている。