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三越伊勢丹HD次期社長の細谷氏 “マス”から“個”の百貨店へ脱皮目指す

 三越伊勢丹ホールディングス(HD)の杉江俊彦社長(60)が4月1日付で退任し、子会社である岩田屋三越社長の細谷敏幸氏(56)が新社長に就任する。コロナ禍のダメージで、2021年3月期には450億円の最終赤字を見込むなど、厳しい経営環境の中でバトンを受ける。26日に開かれた記者会見で細谷氏は「百貨店のビジネスモデルは新型コロナに関わらず、年々市場に受け入れられなくなりつつあった。社内に顧客思考を定着させ、“マス”から“個”へ向けた百貨店ビジネスに変えていかなければならない」と方針を語った。

 杉江社長の後継者議論はコロナ禍の昨年6月から、指名報酬委員会を交えて進められてきた。コロナ禍で都心をはじめとした立地優位性が失われるなど、百貨店を取り巻く状況が大きく変わり、これまでとは違う視点での抜本改革の必要性が高まった。細谷氏は婦人服や服飾雑貨、特選・宝飾など百貨店の王道を歩んできた「営業のエース」(杉江社長)。だが、杉江体制以降は三越伊勢丹HDの経営企画部長としてグループ経営の視野を培い、近年業績が低迷していた岩田屋三越の社長として19年3月期には同社で過去最高益へと再生させるなど、地方店運営にも手腕を発揮。後継候補のトップに躍り出た。

 岩田屋三越での顧客重視の方針を、三越伊勢丹HDのトップとして全社に波及させる。岩田屋三越時代は、岩田屋本店の優れた品ぞろえを久留米店(福岡県久留米市)の顧客にも提案するため、外商販売やオンライン接客などパーソナルなサービスを充実させたことが奏功した。「これまでの百貨店はたくさんお客さまを呼び込み、店内をたくさん買い回ってもらうことを前提にしていた。だが今は目的意識の高い方の来店が増え、必要なものだけを買って帰られる。呼び込むコストとリターンが見合わない、時代遅れのビジネスモデルになっている。マスではなく顧客に向けて、上質で感度の高いものを提案していかなければならない」。

 退任する杉江氏は就任時から、不採算店舗の整理や人件費削減といったコスト構造改革を強力に推し進めてきたが、「(改革は)一定のめどが立った」と振り返る。並行して、近年はECやオンライン接客などデジタルでの販売・顧客接点強化にも取り組んできた。21年3月期は巣ごもり消費も追い風に、EC売上高が300億円、オンライン会員は160万人への到達を見込むなど、「(デジタルによる)今後の成長の“種”は撒けた」と一定の手応えを得る。細谷氏はこの“種”を収益の柱に成長させることに加えて、リアル店舗における店舗面積の適正化など、途上の改革についても引き続き進めていくことになる。

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