世界に目を向けると、日本とは異なる美容トレンドが生まれている。そこで連載「海外ビューティ通信」ではパリやニューヨーク、ソウル、ベルリンの4都市に住む美容通に最新ビューティ事情をリポートしてもらう。
シカクリームブームのきっかけは?
韓国では皮膚再生クリームとも呼ばれるシカクリームは、日本でも注目を集めている。人気のきっかけをさかのぼると、2000年代に韓国で大ブームとなったBBクリームにたどり着く。ドイツ発祥のBBクリームは元来、医薬品として皮膚科で使われていたもので、紫外線などの外部刺激を遮断し、肌を保護しながら赤みをカバーし、肌の再生を促す機能を持ったメイクアップクリームとして生まれた。ドイツから韓国に入ってきたのは1980年代。皮膚科やエステサロンで浸透した後、2000年代に入って韓国女優がこぞって使い始め、ナチュラルメイクブームのきっかけになった。
シカクリームの「シカ(CICA)」は、ツボクサ(学名:Centella Asiatica、センテラアジアチカ)を指す。ツボクサの抗酸化力や抗炎症力が肌の回復を促すほか鎮静効果があるといわれていることから肌再生クリームと呼ばれている。ツボクサは欧米などでも昔からポピュラーなスキンケア成分ではあるものの、美容大国の韓国で「シカ」と名付けて売り出されたことで、18年ごろから人気が爆発してデイリーなスキンケアアイテムとして定着。世界中でトレンドとなり、さまざまなブランドが独自の機能を加えたシカクリームを続々と発売している。
話題の次世代シカクリーム
そんな中で最近話題になっているのが、韓方ベースの次世代シカクリームだ。昨年7月にロダム韓方クリニック(ソウル市江南区)が発売した“バイロダム リペア ゴールドライン”は、現代医学と韓方医学を融合したハイブリッド再生クリームだ。同クリニックのホン・ムソク(Hong Museok)代表院長が、ニキビ痕の再生治療を通じて発見した肌の力に注目し開発した。シカ成分のほか、西洋医学で注目されている次世代再生成分のタマネギ抽出成分や、韓医学で肌に良いとされている韓薬剤を配合。タマネギに多いスピレオシード成分は、紫外線などでダメージを受けた肌を鎮静、保護すると同時に肌の再生を促進する。低刺激なので乳幼児や敏感肌にも安心だ。
敏感肌向けスキンケアブランド「ラゴム(LAGOM)」も昨年10月、“センシティブ シカクリーム”を発売した。ツボクサから得られる4つのシカケア成分と、亜鉛とカルシウム、マグネシウムの3つのミネラル成分が肌トラブルを沈静して保護する。高い保湿効果が肌の回復を促し、過剰な皮脂と毛穴を集中的にケア。べたつかないテクスチャーも特徴だ。有害成分20種は無添加、皮膚刺激テストとニキビ肌の適合化粧品テスト済みで敏感肌でも安心して使える低刺激処方だ。
ほかにも製薬会社が最新の肌研究に基づく製品を発売するなど、シカクリームの開発競争が活発化している。環境や時代の変化により生まれるさまざまな肌悩みに対応する、進化したシカクリームの登場に期待したい。
チョン・ジャキョン:フリーランスコーディネーター兼ライター。ソウル生まれ。アート関連会社と映画製作会社の演出部を経てメディアコーディネーターに転身。雑誌を中心にテレビ、広告、スポーツなど幅広い分野で活躍。携わった書籍は「ソウル美容完全ガイド」(講談社刊)など多数