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津田沼パルコ閉店と「津田沼戦争」 エディターズレター(2021年3月2日配信分)

※この記事は2021年03月02日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

津田沼パルコ閉店と「津田沼戦争」

 J.フロント リテイリングは、子会社のパルコが運営する「津田沼パルコ」(千葉県習志野市)と「新所沢パルコ」(埼玉県所沢市)を閉店すると発表しました。

> パルコ、津田沼店と新所沢店の営業終了を発表 郊外ターミナル消費の象徴

 商業施設の閉店は珍しいことではありませんが、津田沼はある時代の小売業を代表する場所でした。

 津田沼は1970〜80年にかけて「津田沼戦争」と呼ばれる激しい商戦の舞台でした。地元資本の小さな店舗しかなかった津田沼駅周辺に、飛ぶ鳥を落とす勢いだったGMS(総合スーパー)のダイエー、イトーヨーカドー、セゾングループの西友とパルコ、若者に人気だった丸井、そして百貨店の高島屋が次々に開業して、全国屈指の激戦区になったのです。

 大型店に衣食住をトータルでそろえるGMSという業態は、現在では凋落してしまいましたが、当時は小売りの王様でした。1980年にはダイエーが日本の小売業初の売上高1兆円を達成し、イトーヨーカ堂がそれを追いかける。ダイエーとヨーカドーはそれぞれ一番店(売上高全国1位)が津田沼店でした。そこにセゾングループのパルコ、さらに丸井、高島屋も参戦し、局地戦の様相になったのです。

 それから30年以上が過ぎました。現在、津田沼駅周辺に残っているのはパルコとヨーカドーだけ。他は全て撤退しました。パルコが2年後に閉店すると、ヨーカドーだけになります。

 この間、小売業に起こった変化は大きく3つあります。

 第一に90年代に本格化したカテゴリーキラーの台頭。「ユニクロ」「洋服の青山」「西松屋」「ニトリ」「ヤマダ電機」「トイザらス」など、特定の商品カテゴリーを豊富な商品量かつ低価格で提案するカテゴリーキラーが急成長し、総花的な品ぞろえの百貨店やGMSから客を奪います。津田沼ではGMSや百貨店が撤退したビルはそのまま残っており、これらのカテゴリーキラーがフロアを埋めています。丸井だった建物は「ユニクロ」の親会社ファーストリテイリングが運営するファッションビル「ミーナ」になっていて、「ユニクロ」「AOKI」「ダイソー」などがテナントとして営業しています。津田沼パルコも「ファッションセンターしまむら」「ジーユー」「西松屋」などの大型店が入っており、都心のパルコとは異なる姿です。

 第二に2000年以降の大型ショッピングセンター(SC)の開発ラッシュ。大型SCの出店を規制していた大店法が廃止されたため、郊外に大型SCが次々に誕生して買い物客が流出しました。同じ商圏にあったららぽーとTOKYO-BAYは増床を繰り返し、集客力を高めていきました。イオンモールも津田沼、船橋、幕張など同じ商圏に相次ぎ開業。特に03年に開業したイオンモール津田沼は、京成津田沼駅を挟んだヨーカドーの隣(人工スキー場の跡地)という立地でした。

 第三にネット通販(EC)の浸透。これは津田沼に限らず全世界的な潮流ですね。消費行動がリアル店舗一辺倒ではなくなりました。コロナを機にますます加速しています。

 こうして振り返ると、津田沼はこの半世紀の小売業の縮図のような場所に思えてきました。全国の郊外都市や地方都市で起きた消費市場の変化が、津田沼では激しいかたちで表れたといってよいでしょう。

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