ショーの後に“ミセス・プラダ”を囲むざっくばらんトーク これが面白い
本日3月2日(火)は、2021-22年秋冬パリ・ファッションウィークの初日です。2月から、ニューヨーク、ロンドン、ミラノ、パリと従来のサイクル通りに2021-22年秋冬コレクションがオンラインにて進行中で、各都市の主催者が用意したタイムテーブルに即して発表が続いています。パリは服飾学校の「IFM」から、日本時間の午前1時半にキックオフです。正直言うと、このように自分自身にリマインドしなければパリコレ通を自認する私でも他の業務に時間も気持ちも引っ張られて見逃します。ファッションウィークは多くの人にとって、“今どこで何が行われているのかさっぱりわからない状態”かと思います。
実際デジタルの大海原に飲み込まれちゃうコンテンツもありますが、一方でオンラインだから実現している面白いコンテンツもあります。ファッションデザイナーは元来、新しいもの好きが多いからか試行錯誤をしながらデジタル発信の知見が溜まり、回を追うごとに進化するデザイナーも多く、たくましいです。
その一つが「プラダ」がショーの後に開くトークイベントです。前回はミウッチャ・プラダとラフ・シモンズの二人で行ないましたが、今回は外部から識者を招いてメンバーを拡大。デザイナーのマーク・ジェイコブス、アカデミー賞映画監督リー・ダニエルズ、ショー音楽も手がけたテクノ界の大御所DJリッチー・ホウティン(彼の背後に大量のDJ機材が写り込んでいて楽しい)、建築家のレム・コールハース、俳優のハンター・シェイファーなどフィールドが異なるクリエイターたちが「プラダ」を多面的に語りました。トークショーの動画はルック(「プラダ」2021-22年秋冬ミラノ・コレクション)と一緒に公開されています。
オンラインイベントに“視聴率”があるなら、約20分の番組のピークは11分頃。"あなたにとって「プラダ」ネスとは?"とのお題にマーク・ジェイコブスが憧れの上級生を前にした少年の顔となり熱弁を振った瞬間ではないでしょうか。マークが「“プラダネス”とはミセス・プラダのことだ」と話し始めると、ミウッチャが声をあげて苦笑。するとマークは「ミセス・プラダ、笑わないで」とやや傷ついたような表情で即反応しつつ続けます。「ミセス・プラダの信じられないほどのセンスと眼力、知性、センス、ファッションへの愛。それはアントニオーニ、フェリーニ、ヴィスコンティの映画の中にあるようなもの」とイタリアの巨匠映画監督の名前を挙げて語っていました。
私がファッションで好きなのはこういうところです。大の大人たちが美意識など正解のない話題について極めて真剣になるところです。マークの話を受けて、「プラダ」の建築を多く手がけるレム・コールハースが披露した“ミセス・プラダがノーと言うとき”の逸話も面白い。さらにそんな話が展開されているとき、ミウッチャとラフは二人して腕組みをして同じポーズで話を聞いており、「この2人は本当に似たところがあるのね」と気がついたりして、そんな人間観察も楽しいです。彼女のことを「WWDジャパン」をはじめ多くの人が親しみを込めて“ミウッチャ”と呼びますが、登壇者は“ミセス・プラダ”と敬意を込めて呼んでおりそこも印象的でした。
多分これまでもショーの後、世界中のカフェでこんな会話が展開されていたのでしょう。それがまるでクラブハウス上みたいにカジュアルに共有されておりとても興味深いです。そんな面白さを探して今週はパリコレ取材をしようと思います。
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