今、Z世代から絶大な支持を得ているアーティストが、“ポップ・プリンス”ことコナン・グレイ(Conan Gray)だ。現在22歳の彼は2020年に発表したデビューアルバム「Kid Krow」で、全米アルバムチャート初登場5位、ポップ・アルバム部門で初登場1位に輝いた。また次世代のファッションアイコンとしても注目を集め、「ヴォーグ(VOGUE)」や「ナイロン(NYLON)」、「i-D」などの表紙を務めている。Z世代の代表格であるビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)をはじめ、グローバルで人気を集めるBTS(防弾少年団)の“V”ことキム・テヒョン(Kim Taehyung)、テイラー・スウィフト(Taylor Swift)も絶賛する。日本人の母とアイルランド人の父を持ち、幼少期は広島で過ごしたという経歴を持つ本人にZoom取材を実施。冒頭は「こんにちは」という流暢な日本語からスタートした。
「同世代に人気を集める理由なんてわからない」
WWD:デビューアルバムの「Kid Krow」はどんな作品?
コナン・グレイ(以下、グレイ):僕の青春の全てを描いたアルバムだよ。「Kid Krow」は僕の物語の始まりであり、グローバルに発信するためのプロフィールのようなもの。でも、ここまで反響があるとは全く予想していなかった。みんなが狙い通りに解釈してくれたことは本当にうれしいし、僕のさまざまな感情や人生への不安を感じ取ってくれたんだと思う。
WWD:ティックトック(TikTok)でヒットした「Heather」は、みんなが「“Heather”って誰?」と必死に探すほど話題になった。
グレイ:「Heather」が世界に浸透するまでは、自分の私生活をこんなに詮索されることなんてなかったから変な感じだったよ。でもあの曲に出てくるのは一般人だから、みんながっかりするんじゃないかな(笑)。僕は田舎で育ったから有名人と付き合う機会なんて無かったし、「何で僕の人生をそんなに気にするの?」とびっくりしたよ。いろいろな人が「Heather」は自分のことだって偽装していたけど、「あなたとは会ったこともないじゃん!」って感じだった(笑)。がっかりさせて申し訳ないけど、僕の生活は本当に普通だから。
WWD:ティックトックやインスタグラムを巧みに使いこなしているけれど、SNSの良い面と悪い面は?
グレイ:今のSNSは規制がない無法地帯で、とても怖い場所だね。僕が子どもの頃はもっと快適で、9歳からユーチューブ(YOUTUBE)に動画を投稿していたから。お母さんがインターネットを自由に使えるようにしたのは重大なミスだね(笑)。やり始めたきっかけは、ただ田舎の生活に退屈していたから。学校にはほとんど友達がいなくて、インターネット上の見知らぬ人に慰めを求めていたんだ。でも今思えばそれは本当に危険なことだし、絶対におすすめしないよ。最近はファンとのコミュニケーションを取る場所として使っている。もしみんなが使わなくなったら、とっくにやめているね。
WWD:Z世代にどんな点が支持されていると思う?
グレイ:それはよく聞かれるけど、なんて答えればいいのか分からないんだよね。僕自身がZ世代で、これまでの人生について書いているだけだから(笑)。それに共感してくれる人を見ると、「僕は実際狂っているから、それに共感しているあなたも狂っているね」といつも笑うんだ。
WWD:Z世代に向けた「Generations Why」は、どんな思いを込めた?
グレイ:僕は小さな町で育ち、年寄りのムカつく話を聞いて過ごしてきたんだ(笑)。「お前ら若者はクズだな。働く意味も知らないしな!」といつも言われてきた。でも今の僕たちの仕事の定義は、ムカつく大人たちが育った1950年代とは全く違う。だからこの曲は、そういった固定観念をからかったジョークなのさ。
WWD:新曲「Overdrive」では何を表現した?
グレイ:「Overdrive」は、少しの現実逃避を表現したんだ。自由に夢を見て、人生でやりたいことをするというテーマで書いた曲だよ。僕が音楽に求めているのは、自分の悩みを少しでも忘れさせてくれるような場所。僕も外出自粛期間前は当たり前のように生きていたけど、今となってはそれが出来ないからね。
服はブランドよりも気分が高揚するか
グレイ:ブランドよりも気分を高揚させてくれるかどうかが重要さ。「グッチ(GUCCI)」を着たい時もあれば、シンプルなTシャツを着たい時もある。普段はコンサバティブなデザインのオーバーサイズなスエットをよく着ていて、変装するぐらいにアクセサリーを付けるのも好みかな。
WWD:「ベルシュカ」や「エクストララージ」とコラボした感想は?
グレイ:「ベルシュカ(BERSHKA)」は以前から好きだった。店頭で自分の名前や顔が描かれたTシャツを見たときは、本当に信じられなかったよ。「エクストララージ(XLARGE)」は独自のスタイルを確立していて、その世界観に「Kid Krow」のコンセプトを融合して製作したのさ。彼らとコラボできたことはすごくうれしかったね!
WWD:音楽とファッションの関係性は、この先どうなっていく?
グレイ:今でも密接な関係を築いているよね。僕も好きなアーティストを見た時、「あの人が着ているシャツかっこいい。あんなシャツを着てみたい」とみんなと同じように感じるし。だから音楽を通してファッションを探求するのは楽しいし、ミュージシャンが着るものは社会に大きく影響しているんじゃないかな。僕が着ている服をファンに探られるのは変な感じだけどね。
WWD:今後の夢は?
グレイ:全員が元の生活に戻ること。本当にお願い。みんな外に出るのはやめて!。自粛期間中の音楽制作は大変だけど、その分、今はいろいろなことに挑戦できている。これからもファンのために沢山の曲を作っていきたい。