新型コロナウイルス感染症が本格的に拡大してから丸1年がたった。マスマーケットからは「消費者は吟味を重ねて本当に必要な商品だけを買う」「価格に対してよりシビアになった」といった声が聞こえてくる。3月12日からの「ユニクロ」「ジーユー」の9%の値下げも、そうした世相を反映している。しかしそれとは全く様子が異なるのが、百貨店の特選フロアなど高額品市場だ。訪日外国人客を失ったことはもちろん痛手だが、国内の富裕層のニーズの掘り起こしによって、特選売り上げは堅調という百貨店は多い。特に、都心への外出を控える地元客を取り込んでいる、地方店・郊外店の好調が目立つ。詳しくは、2月22日号の弊紙特集「2020年秋冬に売れたものは何だった?」を参照してほしい。(この記事はWWDジャパン2021年3月8日号からの抜粋です)
ここ数年、地方百貨店は閉店が相次いでいる。2月28日にもそごう川口店がひっそりとその幕を下ろし、こちらは地方店ではないが、三越恵比寿店も同日で営業を終了した。そんな中にあって「地方百貨店で特選売り上げが好調」というのはかなりの朗報だろう。しかし、ここで「売れてよかったね」で終わってしまっては話はそこまで。コロナ禍と歴史的な株高を背景に、地元の百貨店で特選ブランドを買うようになった地方の富裕層も、感染が収まれば再び大都市の店舗に舞い戻ってしまう可能性は高い。だからこそ、「勝ってかぶとの緒を締めよ」ではないが、地方・郊外の百貨店は、今こそ手を打たねばならないだろう。
こんな表現をしてしまっては元も子もないが、百貨店の特選フロアの商売というのは、つまるところ「希少性の高い高額商品を扱えるかどうか」に左右される部分がとても大きい。バッグであれジュエリーであれ、通常ならば希少な高額品は、外国人客も含めて客数の多い都心の店舗に納入されることが多かった。それが変化したきっかけがコロナ禍だ。都心に人が減ったことで、地方店にも希少品が行き渡るようになっている。売る商品があるのだから売り上げは必然的に伸びる。もっと大きな目で見れば、本来ならば欧州の旗艦店で扱うような希少品が、コロナ被害が比較的軽微な日本を含むアジアに今は流れてきている面もあるのだろう。
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