マンガ「エルメスの道」新版の読書感想文
「エルメス」表参道店のオープンを記念して、マンガ「エルメスの道」の新版が中央公論新社から3月10日に出版されます。地下鉄表参道駅に大きなポスターが掲出されていたので印象に残っている方も多いかと思います。著者は竹宮惠子さん。1997年にも同名のマンガが出版されており、今回は「エルメス」のその後20年間のストーリーを加えてまとめています。これから読む方のためにネタバレを避けつつ、マンガ読書感想文を書きますね。
印象的だったのは「エルメス」が主催する馬術競技“ソー・エルメス”の誕生秘話です。“ソー・エルメス”は2010年からパリのセーヌ川沿いに立つ建物グラン・パレを会場に開かれている国際馬術大会です。私はラッキーなことに自分の目で、しかもオリンピック出場経験もあるエルメス銀座店の後藤浩二朗・馬具テクニカルアドバイザーの解説付きで “ソー・エルメス”を取材したことがあります。そのときの記録がこちらです。
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後藤さんは「馬はいわば乗り物で、アクセル、ブレーキ、ハンドルの3つを人間の体の動きで馬に伝えるのが基本。CSI5レベルの馬ともなればF1マシンを乗りこなすようなもので高度な技術が求められる」と教えてくれました。この言葉は、私の取材人生の中でも忘れることができない名言の一つになりました。ちなみに、CS15とはフランス馬術連盟(FFE)および国際馬術連盟(FEI)認定のカテゴリーの最高峰を意味し、“ソー・エルメス”もその一つです。
競技で使用する障害物と障害物の幅はバラバラに設置されています。ライダーたちはジャンプ後に馬の前足をどこに着地させ、どんな歩幅で走り、次の障害物の前のどこでジャンプさせるのか。その絶妙な間合いを鞍と自分の体を通じて馬に伝えているのです。相手は生き物です。感情もあれば体調もあります。だから馬術はライダーの心技体だけではなく、馬の心技体のバランスも取れた時に最高のパフォーマンスを発揮します。それだからかトップライダーと馬は野生動物のような緊張感をたたえていて近くで見るとゾクッとしました。
マンガに見る“ソー・エルメス”の誕生秘話はこういったスポーツをなぜ「エルメス」が力を入れているのか、作り上げた人たちの目線で語られていて面白いです。馬具工房にルーツを持つ「エルメス」は今でもライダーと馬をつなぐ鞍の開発研究を続けていますが、それはスポーツブランドがアスリートと組んでシューズの開発を続けるのと同じなんですよね。新版「エルメスの道」は3月10日からオンライン配信があるそうです。ランチのお供にオススメです。
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