海や湖を遠泳するオープンウオータースイミングでオリンピックに2度出場したYASUこと福岡康が、ライフスタイルブランド「アイ スイム アンド トラベル アラウンド ザ ワールド(I SWIM AND TRAVEL AROUND THE WORLD)」を2020年12月に立ち上げた。運営は、福岡が亀井智史CFOと共にファンドや個人の出資を得て設立したアキレス・アンド・センチュリオ(Achilles&Centurio)だ。
アイテムははっ水加工が施されたジャケット(6万8000円)やシャツ(2万1000円)、スエット(1万6000円)などベーシックなウエア5型とキャップやタオルで、販売は自社サイトが中心。ブランドを代表するジーンズ(3万3000円)は、「ハルヒト ジーンズ(HARUHITO JEANS)」の小西健太郎の協力を得て岡山で生産している。ヒップポケットには波型のステッチが入り、はっ水加工をかけ直すサービスも行う。主な顧客層に「泳ぐことをライフスタイルにしている人」を想定し、立ち上げ初月は水泳関係者らが購入して約1000万円を売り上げた。4月3、4日には代官山Tサイト ガーデンギャラリーでポップアップストアを開く。
福岡は12年にロンドン、16年にリオデジャネイロ五輪に2大会連続出場し、リオでは8位に入賞。20年1月に現役を引退するまで年間200日の海外遠征をこなし、その中で「世界に通用する機能の服が作りたい」と構想を描いていった。ブランドはあくまで「ファッションではなく、ライフスタイルブランド。ファッションの感覚は取り入れたいけど、ブランドの軸は泳ぐこと」と強調する。
「絶対に成功できる。
目標が大きいとは思わない」
ファーストコレクションのルックイメージには水泳大国オランダの五輪選手や関係者などを起用し、ブランドコンセプトを忠実に再現した。さらに競泳の塩浦慎理選手やパートナーのおのののか、種市暁にもモデルを依頼するなど、「泳ぐ」ことに関わる人をどんどん巻き込んでいる。今後は日常着をさらに充実させ、水泳用品やジム用ウエア、キッズアイテムなども拡充し、年間売上高2億円を目指す。将来的にはアキレス・アンド・センチュリオで水に関わる他の事業も立ち上げ「目標は2024年までに東証マザーズに上場」と夢は大きい。自身はオーストラリアとの二拠点で活動しているため海外での販路開拓も目指しており、「事業範囲は国内や海外というくくりではなく、地球」と何もかもが規格外だ。「水泳でいうと、まだバタ足ができるようになった程度。でも世界の水泳人口は多いし、その人たちにとって白ごはんのように当たり前の存在になれれば絶対に成功できる。目標が大きすぎ?僕はそうは思わない」。
福岡を目標に向かって突き動かす原動力は、ファッションや人への強い愛情とパッションみなぎる行動力である。自らを「根っからのストリートヘッズ」と称する通り、街で偶然出会った憧れのファッション業界人にはサインを求めて一直線に突撃。五輪出場へのモチベーションは「個の存在感を高めて、憧れのファッション業界の先輩たちと肩を並べるため」というほど、型破りなアスリートだった。しかしビジネスの世界は、夢と希望だけで成功するほど甘くはない。それはオリンピックの舞台にまで上り詰めた福岡自身が一番分かっているはずだろう。ひたすら前向きな性格と、何事にも物怖じしないバイタリティーでビジネスの世界にも大きな波を起こせるのか、注目だ。